実際に肝臓がんの再発率はほかのがんに比べて非常に高く、5年間の再発率は約70〜80%といわれる。手術が成功しても、残った肝臓の慢性肝炎や肝硬変などが改善されない限り、再発の可能性があるとの指摘もある。
「だからこそ」と秋津さんが言葉に力をこめる。
「肝炎が重症化したり、がんに移行してしまう前に、自分が肝炎ウイルスに感染しているかどうかを知っておくことが、何よりも大切なのです」
20年ほど前までは、肝炎を患っていることがわかっても、これといった有効な治療法がなかった。たんぱく質の一種で、ウイルスを排除する働きのあるインターフェロンを注射する治療法が行われていたが、治癒率はわずか5%程度にすぎなかった。
しかし、ウイルスを排除する力を増強する内服薬が登場し、インターフェロンとの併用で治癒率は約50%にまで上昇。さらに約10年前には経口抗ウイルス剤が登場し、インターフェロンの注射を打たずにのみ薬だけで治療することが可能になるなど、治療方法の進歩によって治癒率はさらに上昇している。
「B型肝炎もC型肝炎も、根治は難しいものの、治療によってほぼウイルスを抑え込めるようになっています。感染を早期に発見し、治療する。それがいちばんの肝臓がん予防になると考えてください。
そのために、まずは感染しているかどうか検査をすること。検査はもちろん病院で受けられますが、いまは全国の多くの自治体が肝炎ウイルス検査を無料で実施しているので、それを利用するといいでしょう」
無料で受けられるのは一度だけだが、母子感染や子供の頃の集団予防接種などで不安がある人は、とりあえず検査を受けておけば安心だ。
「あるいは献血をすると、肝機能と肝炎の検査結果を教えてくれます。どんな方法でもいいので、まずは自分が肝炎にかかっているかどうかを確認すること。肝炎ウイルスが見つかれば、適切な治療をすることができます」
日頃のチェックでがん罹患リスクが低下
もし検査で感染がわかった場合は、国から医療費助成を受けることができ、自己負担額は所得に応じて月額1万〜2万円ですむ。
肝臓がんの罹患リスクを低下させるには、飲酒や食事などの生活習慣を改めることはもちろん大切。しかし、自らの努力だけでは避けられない病もある。気づかぬうちに、そのリスクを保有している可能性があるからこそ、定期的な検診で肝臓の状態をチェックすることは欠かせない。
“がんで死なない”時代にあっても、治すことが難しい肝臓がん。肝炎ウイルス検査を受けて、未然にリスクを減らすことを心したい。
※女性セブン2023年8月10日号