夏の甲子園大会というと、負けたチームの選手が泣きながら「甲子園の土」をかき集めて持ち帰るのも風物詩である。しかし、今回、負けた広陵高校が、それをしなかったことも話題になった。広陵の選手たちもああいうおセンチな行為から卒業したのか、時代が変わったなあと思ったら、あれをやらないのは広陵の伝統なんだそう。強豪校ゆえ「自分たちにとって甲子園の土は特別なものではない」ということか、もしくは「チームとしてはまた来年も絶対に来るから」という暗示なのだろうか。まあ伝統もいいのだけれど、甲子園の土を持ち帰りたい人(これが最後のチャンスだった三年生とか)は持ち帰ればいいのに。チームとして統一しなくてもいいのではないだろうかと、団体スポーツの経験がない私は思ってしまう。髪型も、甲子園の土も、選手の自主的な選択が優先されるべきだ。
ベスト8に進出した慶應が次に戦うのは沖縄代表の沖縄尚学。8月19日の第一試合の予定だ。髪を切って出直す必要なんかないので、がんばれ!
◆甘糟りり子(あまかす・りりこ)
1964年、神奈川県横浜市出身。作家。ファッションやグルメ、車等に精通し、都会の輝きや女性の生き方を描く小説やエッセイが好評。著書に『エストロゲン』(小学館)、『鎌倉だから、おいしい。』(集英社)など。最新刊『バブル、盆に返らず』(光文社)では、バブルに沸いた当時の空気感を自身の体験を元に豊富なエピソードとともに綴っている。