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詐欺事件で注目の『皇室献上品』 知られざるルール「宮内庁が集めることはない」「知事が願い出るシステム」

令和への御代がわりでは全国各地から献上品が贈られた(上)。特別展(’19年)で平成の時代に贈られた献上品をご覧になる上皇ご夫妻(撮影/JMPA)

特別展(2019年)で平成の時代に贈られた献上品をご覧になる上皇ご夫妻(撮影/JMPA)

「おたくの畑で育った作物を、皇室に献上しませんか」──そんな誘い文句とともに、全国の農家をだましてきた男が逮捕された。事件でターゲットになったのは、みずみずしい夏の果物、桃。

「宮内庁職員を騙り、福島市内の桃農家から“皇室献上品”として桃をだまし取ろうとした詐欺未遂の容疑で、7月下旬に70代の男が逮捕されました」(全国紙記者・以下同)

 この男、どうやら桃だけを狙っていたわけではない。

「全国で桃以外でも同様の被害が相次いでいます。中には『通常とは別ルートで献上品にできる』と言われるがままに農作物を渡し、代わりに献上したことを示す『木札』を受け取っていた農家もあり、余罪はかなりの数にのぼるとみられています。

 宮内庁は、“木札のようなものを渡すようなことはない”と発表し、公式ホームページでも『宮内庁又はその職員が皇室への物品の献上を一般の方に依頼し、献上につき看板の様なもの等をお渡しすることはありません』と注意喚起するなど、大きな騒動になりました」

 あろうことか、「皇室」の名を騙った不届きな事件。そもそも、「皇室献上品」とはどのようなものなのか。

 米なら丁寧に手入れされた田んぼで育ち、果物なら上品な甘さで傷ひとつなく、加工品なら熟練の職人の手仕事が感じられる—そんな印象の強い皇室献上品だが、いったいどのようなものをそう呼ぶのか。元宮内庁職員で皇室解説者の山下晋司さんが解説する。

「『献上』というのは皇室に関する特別な言葉ではありませんが、一般的に皇室への献上というと天皇陛下への献上をイメージすると思います。この天皇陛下(上皇陛下など内廷の方々を含む)への正式な献上は宮内庁の長官官房総務課が担当しています」

 民間からだけでなく、即位の礼などの大きな行事の際には衆議院や参議院、内閣といった国の組織からも献上されている。こうした品は、宮内庁が集めるものではないという。

「各都道府県の知事から『献上したい』という願い出を宮内庁が受け取って、可否を判断します。宮内庁からリクエストすることは一切ありません」(山下さん・以下同)

 つまり前述した事件のように、“宮内庁職員が自ら”献上依頼をすることはない。宮内庁が直接生産者とやりとりすることもなく、都道府県が主体となって申請する。御代がわりなど大きな行事以外では、どのようなきっかけで献上の機会が訪れるのか。

「天皇皇后両陛下が地方を訪問されたあとで、その都道府県が地元の名産品を献上することが多いと思います。都道府県としては、地元の産業を奨励するという意味合いもあるでしょうね」

 もうひとつのタイミングとしては「受賞」がある。

「農林水産大臣賞などを受賞したのを機に献上願いをすることもあり得ます。献上品となればさらに格が上がりますし、両陛下にお召し上がりいただいたとなれば、農家の栄誉となるのは間違いありません。都道府県としても、農家へのこれ以上ない奨励になるでしょう」(宮内庁関係者)

※女性セブン2023年8月31日号

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