指導経験も豊富な川相(写真はそれまでの犠打世界記録を破る512本目の瞬間。2003年8月20日)
FAも逆指名ドラフトもなかった1980年代、二軍の多摩川グラウンドで泥まみれになってレギュラーを勝ち取った川相は、若手の育成を急務とする現代の巨人に最も合った指導者かもしれない。
「ドラフト会議のなかった自由競争時代はアマチュアのナンバーワン選手がこぞって巨人に集まった。そのため、川上哲治監督時代に9年連続日本一という空前絶後と思われる記録が生まれました。1965年にドラフト制度が始まり、1970年代半ばには戦力が均等化していき、巨人一強の時代は終わりました。しかし、1993年秋にドラフトの逆指名制度が始まり、FAも導入されて再び巨人に有力選手が集まるようになりました」(前出のベテラン記者。以下同)
今は逆指名ドラフトが廃止され、FAで巨人に行きたがる選手も少なくなった。そのため、これからの巨人は1980年代のように若手を育てて勝つ野球に転身しなければならない。
「1980年代は投手では槙原寛己、斎藤雅樹、香田勲男、桑田真澄、野手では岡崎郁、駒田徳広、吉村禎章、村田真一などが成長してチームの主軸になった。彼らは全て高卒選手です。あの頃は何かとV9時代と比較されましたが、巨人は1980年代一度もBクラスになっておらず、4回優勝している。この頃のチーム作りは、もっと評価されるべきです。ドラフトで12球団の戦力が均等し、FAもなかったですから。その時代に、巨人の選手として這い上がった経験のある川相さんこそ、今のジャイアンツの監督にふさわしいという声もある。しかも、ドラフト4位からですからね」
「藤田監督と落合監督の良さをミックスできる人材」
川相は現役時代に藤田元司、王貞治、長嶋茂雄、原辰徳、落合博満という5人の監督のもとで働き、指導者としては落合博満、原辰徳、高橋由伸という3人の監督のもとでコーチや二軍監督を務めた。
「誰しも指揮を執れば、現役時代の監督に否が応でも影響を受ける。川相さんは藤田監督の時にレギュラーを奪った。ですから、もし監督になれば、おそらく藤田監督のような投手力を中心とした守りを重視した野球をするでしょう。長年、野球界に関わってきて、藤田監督や落合監督のように守備から固めるとチームが強くなると実感しているはずです。今年の原監督は走塁や守備でボーンヘッドを繰り返すブリンソンを懲りずに使いましたが、川相監督ならどうだったか」
