アメリカへ旅立つ笠木シヅ子さん(左)と服部良一さん(右)

アメリカへ旅立つ笠置シヅ子さん(左)と服部良一さん(右)

「NHKからは連絡を受けていません」

『ブギウギ』の原案本には約30ページにわたり、笠置さんとひばりさんのエピソードが綴られている。

「ひばりさんとの因縁や確執がここまではっきり原案本に書かれている以上、ドラマでも避けて通ることはできないはず。何より、ひばりさんは誰もが知る国民的歌手ですからね。当時のことを知る朝ドラ視聴者もいるでしょうし、彼女の登場を心待ちにしているでしょう」(前出・テレビ局関係者)

 しかしそんな期待とは裏腹に、ひばりさんが登場する気配は一向に見えてこない。前出の芸能関係者が話す。

「実はNHKは、これまでもひばりさんを正面から描くことを避けてきた。たとえば今年8月にBSプレミアムで放送された単発ドラマ『アイドル』は、戦前から戦中にかけて人気を博した明日待子が主人公。ラストにはブレーク前の美空ひばりさんを思わせる『美空和枝』が登場しましたが、いわゆる“チョイ役”でした」

 歌い手としての美空ひばりがこれまで登場してこなかった状況に、「あくまでも臆測ですが……」と前置きした上で前出のテレビ局関係者が明かす。

「ひばりさんの実弟、かとう哲也さんは歌手としてデビューし、舞台や映画にも出演しましたが、賭博や銃砲不法所持などで何度も検挙され、暴力団の舎弟頭だと名乗ったことも問題になった。

 ひばりさん自身も暴力団関係者と懇意であることを隠さず、それを問題視したNHKは1973年の紅白で彼女を落選させた。そんなバックグラウンドがあるため、ドラマでひばりさんを描くのは難しいのかもしれません」

 もちろん朝ドラはフィクションで実在の人物がモデルでも、すべてが史実通りに描かれるわけではない。実際『ブギウギ』でも第3週?第4週にかけて、歌劇団のストライキ、通称「桃色争議」が取り上げられたが、原案本に登場する、ストライキの中心となった人物が劇中には一切登場しなかった。

「男装の麗人として知られた水の江瀧子さん(享年94)です。彼女には暴力団との関係などが取り沙汰され、『芸能界の闇』という暗いイメージがあるからかもしれません」(前出・テレビ局関係者)

 笠置さんとひばりさんの関係を描くには欠かせないアメリカ公演にも、大きな問題が横たわる。

「笠置さんは1950年にハワイやロサンゼルス、ニューヨークなどで公演をしましたが、ロサンゼルス公演の際、通訳を兼ねてステージマネジメントなどを手がけていたのが、ジャニー喜多川さん、メリー喜多川さん姉弟でした。この部分はバッサリ落とされるでしょう。いま、彼らの“影”を出すことはNHKとしてはできない」(前出・テレビ局関係者)

 ひばりさんの長男である加藤和也さんに、彼女の『ブギウギ』への出演がないかを問うと、「NHKからは特にご連絡を受けておりません」と答えた。

 朝ドラが触れない笠置さんの裏面史を知ることも、『ブギウギ』を楽しむためのスパイスとなる。

※女性セブン2023年11月16日号

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