役者としては、素の自分を知られない方がやりやすい
長澤まさみから「弟だと思っている」と
「最初の頃は温厚で優しい人という役が多かったけれど、あるときからちょっと怖い役が続いたんです。この時期を見て育った若い俳優さんは、ぼくのことを怖い人だと思っているみたいですよ。
両極端な役をやる中で、『小日向さんって本当はどんな人なの?』と取材でもよく聞かれますが、役者としては、素の自分をなるべく知られない方がやりやすいんです。役ごとに、見る人が感情移入できるから。
毎回、作中の“その人そのもの”に見えるということは、役者冥利につきるんです。
だけど、バラエティー番組に出ると、ついつい私生活をあけすけにしゃべっちゃうんですよ!
かつては知的に見られたいと思う時期もありましたよ。だって『あの人、しゃべるとバカだよね』って思われたくないじゃない?(笑い)
でも、ぼくも来年70才。ここまできてかっこつけることもないかなと、最近は気負わなくなりました」
共演作も多い33才年下の長澤まさみ(36才)から、「小日向さんを弟だと思っている」と言われるなど、若手からも慕われている。
「そうなんだよ! チクショーと思うけど、確かにまさみちゃんが姉さんに見えるときはあった(笑い)。
実際、自分でも、魂がとても幼いんじゃないかと感じることはあります。でも、若い人たちに対等に感じてもらえるのは素直にうれしい。
基本的に、撮影現場はぼくよりも若い人が多いですし、この年でなかなか特殊な環境ですが、それもまた楽しいと思えるんです」
“大御所”ともいえるのに、若手スタッフの懐にもすっと入れる秘訣はどこにあるのだろう?
「ときどき『大御所』なんて言われると、『どこが?』と聞きたいくらい、まったく実感ないですね。
コミュニケーションについては、どうなんだろうなあ……。生まれつきオープンな性格ではあるけれど、年齢問わず、人に不快な思いをさせないようにとは、いつも考えています。ただ、ぼくは仕事が終わるとさっさと家に帰っちゃうんですよ。家が大好きで、もっともリラックスできるから。外も楽しいけれど、やっぱり気を使っているんでしょうね」
(後編につづく)
小日向文世の休日
一日中家から出ず、愛犬(トイプードルのキナコ)とメダカ、観葉植物の世話。飲酒は週に2日程度。休日の前夜は、空が白むまでお酒を飲みながらYouTubeでUruやアンジェリーナ・ジョーダンといったミュージシャンの曲を聴いたり、時事問題の解説を見たりしている。
小日向文世のメダカ事情
20年以上メダカを育てている。いまは水槽11個ほどにまで増えてしまい、やめるにやめられない状況に。ブリーダーのようになって俳優仲間に配っているそう。最近は朝方冷えるため、ビニールをかけてやるのが日課だとか。
