常盤貴子

「監督のいちばんの魅力は毒舌」と常盤貴子(提供/現代ぷろだくしょん)

山田さんの作品には人間という存在そのものへの尊敬がある

「よーい、スタート!」

 11月上旬、都内にある教会の礼拝堂に威勢のいい声が響き渡る。同日、『わたしのかあさん』はクランクインを迎えていた。早朝から大勢のスタッフが集まって撮影の準備が進むが、何度も一緒に作品を作ってきた「山田組」だけに、慌ただしさはあるものの打ち解けた様子で緊張感は少ない。

「おはようございます!」

 スタッフの声とともに車椅子の山田さんが合流し、和やかな雰囲気の中で撮影が始まった。NGや撮り直しを重ねることもなく、あっという間に最初のシーンを撮り終えた山田さんは「やっぱり、好きなんだよなぁ」と相好を崩した。

「こうして映画を作れることが本当にうれしい。昨日は自主上映会で仙台にいて、とんぼ帰りですが、休んでいる暇なんかない。とにかくこの現場が好きなのよ」

 90才を超えてなお現役の映画監督として作品を送り出す山田さんは、映画監督の夫と立ち上げた「現代ぷろだくしょん」で三國連太郎さん主演の『はだしのゲン』をはじめとして反戦・反差別をテーマに社会に訴えるさまざまな作品をプロデュース。夫の死をきっかけに71才で本格的に監督デビューした。

 私生活では2人の娘の母であり、障害を持って生まれてきた長女に生涯をかけて寄り添ってきた。そんな山田さんが今回メガホンを取っている『わたしのかあさん』は、元養護学校教師の菊地澄子さんの原作で、養護学校出身で知的障害のある両親に育てられた娘が、反発や葛藤を繰り返しながらも両親と向き合い、成長していく物語だ。

「これを撮りたいと思ったきっかけは、相模原の施設でたくさんの知的障害の人が殺された事件があったこと。

 障害は誰しもが持つ可能性があるもので、健常であることは“たまたま”なのに、どうしてそれがわからないんだ、と強い怒りを感じたんです。昔、あの施設で講演をしたこともあったから、なおさら悔しく、悲しかった。だからもしあなたが知的障害だったらどう思う?と世の中に問いかけたかった。

 もし自分だったら……と思えたら、障害者も健常者も手を携えて歩けるんじゃないかと思って、ぜひそのことを映画にしたいと思ったんです」(山田さん)

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