永井豪氏には歳を重ねても変わらない女性観があるという（撮影／藤岡雅樹）
漫画界の巨匠・永井豪氏は、今年で画業56年、78歳を迎えた。『キューティーハニー』の如月ハニーから、「週刊ポスト」で連載100回を突破した『柳生裸真剣』の女性剣士・柳生十兵衛まで、戦う女性を描き続けている永井氏にインタビューを行った。【前後編の後編。前編から読む】
「たくさん、馬鹿なことを描いてきたな」
50年以上の漫画家生活において、常に時代に先駆けるヒロイン像、闘う女性たちを模索してきた永井氏には、歳を重ねても変わらない女性観がある。
「男ばかりの兄弟で育ったせいか、若いころは女性に謎の部分、憧れの部分が多かった。いまは段々と客観的になってきましたが、変わらないのは、崇高な存在でいてほしいという気持ちですね。だから私は悪い女性は描かない。強い女性は描くけれども。
それと、ヒロインの恥じらいはいつも変わらず大事です。読者が感情移入して、深く感じて、いいヒロインだなと思ってもらえる。読者の周りにいる女性のイメージと重なって、身近に感じてくれる瞬間ですね」
頭の中では常に読者の存在を意識している。
「漫画は、見る人の脳を刺激することが大事だと思っています。キャラクターが実際に生きていたらどんな思いを持っているんだろう、と想像や深読みをして読んでいただければ嬉しいですね。
私自身、女性キャラになりきってすごい感情移入して描きますから、自分の反映みたいなところがあるんです。女性なのに、自分が入りこんで話したり動いたりしている。これもずっと変わらないです」
これまで描いた女性でいちばん好きなのは誰？ と訊ねると、永井は「わからないですね。描いている時はとにかくそのキャラに一所懸命になって、描き終わると、とりあえずお別れできるので。いまは十兵衛ラブです」と笑った。
十兵衛はこれから、殺したくない相手と剣を交えていくという。剣豪ならでは、隠密ならではの使命を背負うためだ。そこに十兵衛の成長や未来が重なり、見どころになっていくに違いない。
インタビューが終わり、ハニーのフィギュアを手に取りながら記念撮影をしていると、「ハニーの時は、着せ替え人形がでればいいなあと思ったんだけど、幻になりました。柳生裸真剣のフィギュア、出ないかな」と、にこやかに夢を語った。
