飲食店の「常連」になる効果
気に入った居酒屋などを見つけて、行きつけにしてもいいでしょう。週に1回でも1人の食事で訪れれば、「常連」になれます。この常連効果は大きいものがあり、そこでのお馴染み同士で仲良くなって、男女問わず友達ができるかもしれません。お互いにお勧めの店を教えあったり、世間話に花を咲かせたりと、そこで発生するコミュニケーションは、妻と2人で家にいては得られない貴重なものです。
そうした時間を重ねていくと、昔ながらの近所付き合いに似た関係ができあがるかもしれません。ゆくゆくは困った時に助け合えるような、セーフティネットに育つ可能性もあります。
食事ができる居酒屋でそうした店探しをするなら、チェーン店より個人経営、広々とした店よりカウンター数席で話しやすい店主がいるようなところのほうが、コミュニケーションのきっかけはできやすいでしょう。
私も先日、家の近所で新規開拓してみたら、ある出会いがありました。ちょっといかつい顔をした店主が経営する居酒屋で、話の流れで店主に名刺がわりに著書を渡してみたところ、「和田先生ですか。僕は先生のおかげで大学に入ったんですよ」と言うんです。大学受験に際して、私が書いた受験勉強の本を読んでくれたとのことでした。
その店主は地方の国立大学を出て、エンジニアを数年やった後、20代後半で脱サラ。「自分には飲食業が向いている」と一念発起して、3軒くらいの店で10年ほどの修行を積んだそうです。ソムリエや利酒師の資格を取り、鮮魚店にも勤めた後に満を持して開業し、以来10年近く営業しており、お店は盛況でした。
そう考えると、文化として長い歴史を持ち、バリエーションも豊富な居酒屋をはじめとする日本の飲食店は、58歳を過ぎて定年後を見据えた時に、「1人の居場所」として有力な候補と言えそうです。
日本の、特に真面目な男性ほど、結婚後は浮気どころか、キャバクラやクラブなど女性が接待するお店にはいっさい行かないという人が多い印象です。すると、何をするにもプライベートは「妻頼み」になってしまう。
しかし、年月を経てその妻と“相性”が合わないと感じてしまったら、特に定年後はストレスを感じる場面が増える一方です。妻に固執し過ぎないためにも、行きつけの居酒屋で店主やその店の常連同士、年齢も性別もこだわらずに友達をつくって楽しむことは、日々のストレスから逃げるためにも有効な手段なのです。