段違いのスピード感
「安定的な皇位継承は喫緊の課題でありながら、2022年1月に岸田首相が政府の有識者会議の最終報告書を衆参両院の議長に提出して以降、議論が進む気配はありませんでした。風向きが変わったのは、2023年に入ってからです。岸田首相は折に触れて安定的な皇位継承の議論を進める必要性を訴え、ついに11月には自民党内に総裁直属の新組織が設置されるに至りました」(全国紙政治部記者)
「安定的な皇位継承の確保に関する懇談会」の会長は、麻生太郎氏だ。麻生氏は、2022年1月に「皇室に関する課題を議論する懇親会」の会合の座長を務めた経験があり、また、三笠宮信子さまの兄でもある。
「自民党内における麻生氏の調整力は随一です。実際に、岸田首相は麻生氏を頼り、人事などの相談を持ちかけることも多い。その麻生氏を会長に据えたということは、安定的な皇位継承の問題に、真剣に取り組む意向であるという証左でしょう。
早速、11月17日には初会合が開かれ、麻生氏は『安定的な皇位継承について岸田総理からあらためて喫緊の重要な課題であり、わが党として議論に貢献するという意向が示された』『皇室の在り方はわが国の根幹を成す極めて重要な課題であり、事柄の性質も考えて、限られたメンバーで静謐な環境の中で、議論を深めていきたい』と述べています。これまでとは段違いのスピード感です」(前出・全国紙政治部記者)
自民党総裁の任期満了は2024年9月までだが、現在、内閣支持率は10%台に落ち込み、岸田氏が総理・総裁に再任される可能性は限りなく低い。窮地に追い込まれた岸田氏が目をつけたのが、「女性天皇」だったという。
「岸田首相は、とにかく国民からの支持率を復活させたい。難しい舵取りにはなりますが、国民の関心事である皇室制度改革に取り組むことは、メリットがあると判断したのでしょう。起死回生の一手として繰り出そうとしているのが、愛子天皇も視野に入れた女性天皇の容認だといいます。
いまでも女系天皇に反対する声は根強いですが、女性天皇は認めてもいいという声は自民党内でも高まっているのです。国民の8割が女性天皇の実現に賛成という世論調査もありますから、岸田首相が女性天皇容認を打ち出せば、政権運営の風向きも一気に変わる可能性があります」(前出・全国紙政治部記者)
実は、上皇ご夫妻も、女性・女系天皇には反対ではないという。
「皇統を途絶えさせないことが、皇室の至上命題です。上皇ご夫妻は生前退位の際、安定的な皇位継承という課題をいたく案じられ、女性・女系天皇容認について思案されていたこともあったそうです。政府側は、上皇ご夫妻のそういった事情を把握しており、女性天皇の容認に異を唱えられることはないと判断しています」(政府関係者)
さらに、岸田氏の思惑を図らずも“後押し”する騒動が起きた。自民党の最大派閥である安倍派の政治資金パーティーをめぐる裏金疑惑である。