国内

【能登半島地震ルポ】「家が全壊してるのに、そっとご飯を出してくれた…」震災直後の避難所で見た「能登はやさしや土までも」の精神

朝市近くの輪島塗会館前で、被災者のために「能登牛すじカレー」の炊き出しをする田谷さんたち。避難所にも車で配達した

朝市近くの輪島塗会館前で、被災者のために「能登牛すじカレー」の炊き出しをする田谷さんたち。避難所にも車で配達した(撮影/太田真三)

 新年を迎えたばかりの風光明媚な景色が無残に一変した。いまだ収まらぬ余震の中、能登半島地震の被災地では、それぞれに深い悲しみを抱えながらも、互いに支え合い、思いやる。発生直後から現地に入った「週刊ポスト」取材班が、明日へ向かい立ち上がる人々の姿を伝える。

「お兄ちゃんら、お昼、食べにおいで」

 最大震度7を観測した能登半島地震の発生から10日以上が経つ今もなお、被災地の被害の全容がわからず、現地では救助活動が続く。被害が特に甚大な能登半島エリアでは断水や停電が続く地域も広範囲に及び、多くの人々が避難生活を続けている。

 能登半島・七尾湾に浮かぶ能登島(七尾市)。震度6強を観測した1月1日の地震では多くの家屋が倒壊し、津波に襲われ、道路には亀裂や陥没した。島を行き来する2つの橋が隆起で封鎖され、一時孤立状態になった。その後、橋は1本だけ通行ができるようになったが、断水はまだ続いている。

 全域断水の七尾市に1月4日に入り、避難所を巡回しながらシャワーセットで支援活動をしていた「Hatch Planning」(大阪市)の柿花健社長が、能登島の避難所を訪れた時のことを振り返る。

「避難所でシャワーの順番の調整や次の人への声がけを手伝ってくれた地元の女性の方は、家が全壊しているにもかかわらず、私たちに『お兄ちゃんら、お昼、食べにおいで』と声をかけてくれ、そっとご飯を出してくれたんです。思わず、涙が出ました。被災直後でご自身が大変な時に、なんでこんなに人にやさしいんだろうって感動しました」

 この能登島の避難所では、支援物資を届ける自衛隊の車両が到着すると、男女問わず大勢の住民が自衛隊員と一緒に荷台から避難所内への物資の運び込みを手伝っていた。

 七尾市内で避難所に身を寄せている人、スーパーの炊き出しに訪れた人たちに「困っていることはないですか?」と質問すると、「輪島や珠洲の人らのほうが大変やから、自分たちは大丈夫」「他の人のほうがもっとつらいから」という声が決まって返ってきた。

関連キーワード

関連記事

トピックス

佳子さまも被害にあった「ディープフェイク」問題(時事通信フォト)
《佳子さまも標的にされる“ディープフェイク動画”》各国では対策が強化されるなか、日本国内では直接取り締まる法律がない現状 宮内庁に問う「どう対応するのか」
週刊ポスト
『あんぱん』の「朝田三姉妹」を起用するCMが激増
今田美桜、河合優実、原菜乃華『あんぱん』朝田三姉妹が席巻中 CM界の優等生として活躍する朝ドラヒロインたち
女性セブン
東日本大震災発生時、ブルーインパルスは松島基地を離れていた(時事通信フォト)
《津波警報で避難は?》3.11で難を逃れた「ブルーインパルス」現在の居場所は…本日の飛行訓練はキャンセル
NEWSポストセブン
別府港が津波に見舞われる中、尾畠さんは待機中だ
「要請あれば、すぐ行く」別府湾で清掃活動を続ける“スーパーボランティア”尾畠春夫さん(85)に直撃 《日本列島に津波警報が発令》
NEWSポストセブン
宮城県気仙沼市では注意報が警報に変わり、津波予想も1メートルから3メートルに
「街中にサイレンが鳴り響き…」宮城・気仙沼市に旅行中の男性が語る“緊迫の朝” 「一時はネットもつながらず焦った」《日本全国で津波警報》
NEWSポストセブン
モンゴルを公式訪問された天皇皇后両陛下(2025年7月16日、撮影/横田紋子)
《モンゴルご訪問で魅了》皇后雅子さま、「民族衣装風のジャケット」や「”桜色”のセットアップ」など装いに見る“細やかなお気遣い”
夜の街での男女トラブルは社会問題でもある(写真はイメージ/Getty)
「整形費用返済のために…」現役アイドルがメンズエステ店で働くことになったきっかけ、“ストーカー化した”客から逃れるために契約した「格安スマホ」
NEWSポストセブン
大谷家の別荘が問題に直面している(写真/AFLO)
大谷翔平も購入したハワイ豪華リゾートビジネスが問題に直面 14区画中8区画が売れ残り、建設予定地はまるで荒野のような状態 トランプ大統領の影響も
女性セブン
技能実習生のダム・ズイ・カン容疑者と亡くなった椋本舞子さん(共同通信/景徳鎮陶瓷大学ホームページより)
《佐賀・強盗殺人》ベトナム人の男が「オカネ出せ。財布ミセロ」自宅に押し入りナイフで切りつけ…日本語講師・椋本舞子さんを襲った“強い殺意” 生前は「英語も中国語も堪能」「海外の友達がいっぱい」
NEWSポストセブン
大日向開拓地のキャベツ畑を訪問された上皇ご夫妻(2024年8月、長野県軽井沢町)
美智子さま、葛藤の戦後80年の夏 上皇さまの体調不安で軽井沢でのご静養は微妙な状況に 大戦の記憶を刻んだ土地への祈りの旅も叶わぬ可能性も
女性セブン
休場が続く横綱・豊昇龍
「3場所で金星8個配給…」それでも横綱・豊昇龍に相撲協会が引退勧告できない複雑な事情 やくみつる氏は「“大豊時代”は、ちょっとイメージしづらい」
週刊ポスト
NYの高層ビルで銃撃事件が発生した(右・時事通信フォト)
《5人死亡のNYビル乱射》小室圭さん勤務先からわずか0.6マイル…タムラ容疑者が大型ライフルを手にビルに侵入「日系駐在員も多く勤務するエリア」
NEWSポストセブン