藤原為時役の岸谷五朗(時事通信フォト)
【3】「好き者」と揶揄
『源氏物語』の作者であるがゆえに、紫式部は宮中で色恋に詳しい「好き者」と言われてしまう。
「道長は彼女に対して〈すきものと 名にし立てれば 見る人の 折らで過ぐるは あらじとぞ思ふ〉という歌を送っています。
梅の実を置いていた紙に書きつけた歌で、〈酸きもの〉と〈好き者〉を掛けている。色恋のことをわかっているあなたとなら誰でも関係を持たずにはいられないのだろうと、紫式部をからかっているのです」
紫式部はこれに〈人にまだ 折られぬものを たれかこの すきものぞとは 口ならしけむ〉という歌を返した。
「私は誰にも“折られたことがない”(誰とも関係を持ったことがない)のに、誰が好き者だなんて言いふらしたのですか、と言い返した。これは『紫式部日記』に書かれているエピソードです」
宮中のある女房には“ガリ勉女”を意味する「日本紀の御局」というあだ名もつけられた。宮中での生活が嫌になり、一時実家に帰ってしまったこともあるという。