投げる前はサウナに入っていた

 そもそも、今の先発投手は同点で交代を告げられても喜んでベンチに帰っていくが、同点で降板するピッチャーの気持ちが分からない。勝ち星より防御率を気にする選手がいるが、何のために投げているのか。防御率が悪くても勝てばいいでしょう。よくても負けたら意味がない。勝ち星を挙げるために投げているということがわかっていない。

 分業制を最初にやったのが中日の近藤貞雄さんだった。コーチ時代に先発と抑えの分業制を提案し、リリーフエースを作った。監督時代にはスタメンと後半でメンバーを入れ替えるアメフト制を導入した。アイデアマンとしてマスコミが持て囃したが、カネさんは“諸悪の根源”と怒っていた。

 ボクに言わせれば中6日で投げているのは邪道。夏場に完投すると1.5キロは痩せます。体調がいいと翌日には体重は戻ります。(調子が)悪いと1キロぐらいしか回復しない。ボクは22年間、39歳まで投げ続けましたが、キャリア終盤は登板前にサウナに入ることにしていました。本来は投げる前にランニングで目一杯汗をかかないとダメなんですが、年をとると汗をかきにくくなるので、サウナに入っていた。

勝ち試合は人に任せない

 阪急時代に藤本定義監督の下でやったことがあるが、口を出されることなく任せてもらっていた。“今日、何点や”と聞かれ、“2点ください”と言えば、2点を失うまでは何も言われなかった。それで2点を取られると、“どうする?”と聞かれ、“相手も悪いからもう少し行かせてください”と言って投げさせてもらっていた。それで完投能力をつけた。

 簡単にマウンドを譲って、中継ぎが逆転される。そうなったら責任は重いし、何より中継ぎに責任を押し付けないためにも先発完投を目指すべきだと思うね。ペース配分をするのではなく、先頭打者を絶対に出さないという考え方をする。それで0に抑えるイニングを1つずつ伸ばすという考えだった。

 シーズンの目標は20勝だったが、2桁勝利だけは続けたいと思ってマウンドに上がったもんです。20勝するには200イニング以上を目指さないといけない。勝ち試合は人に任せない。ボクは1イニング専門のストッパーも不要だと思っている。逆転負けした時は先発の恨みより、任されたピッチャーのつらさのほうが大きい。ストッパー役の投手にそんな思いをさせないためにも、最後まで投げる。

 昔は先発完投型だけがピッチャーとして扱われていた。分業制は不要だと思う。そういう時代が再びやってこないかと思っている。先発完投を多く揃えたそろえたチームは強いですよ。それだけ体力があるピッチャーがいるということだからね。

(第5回へ続く。第1回から読む

【プロフィール】
米田哲也(よねだ・てつや)/1938年、鳥取県生まれ。現役時代のニックネームは「ガソリンタンク」。計り知れないスタミナの持ち主だった。18歳でのデビュー以来、15シーズン連続で200イニングに登板。2年目からは13シーズン連続250イニング以上で、300イニング以上は6シーズンを数えた。プロ22年間で944試合に登板し、通算投球回数5130イニング。完投は262試合(歴代8位)で、通算勝利350勝は金田正一氏の400勝に次ぐ2位だが、19年連続2桁勝利は日本記録となっている。

※週刊ポスト2024年8月30日・9月6日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

日高氏が「未成年女性アイドルを深夜に自宅呼び出し」していたことがわかった
《本誌スクープで年内活動辞退》「未成年アイドルを深夜自宅呼び出し」SKY-HIは「猛省しております」と回答していた【各テレビ局も検証を求める声】
NEWSポストセブン
12月3日期間限定のスケートパークでオープニングセレモニーに登場した本田望結
《むっちりサンタ姿で登場》10キロ減量を報告した本田望結、ピッタリ衣装を着用した後にクリスマスディナーを“絶景レストラン”で堪能
NEWSポストセブン
訃報が報じられた、“ジャンボ尾崎”こと尾崎将司さん(時事通信フォト)
笹生優花、原英莉花らを育てたジャンボ尾崎さんが語っていた“成長の鉄則” 「最終目的が大きいほどいいわけでもない」
NEWSポストセブン
実業家の宮崎麗香
《セレブな5児の母・宮崎麗果が1.5億円脱税》「結婚記念日にフェラーリ納車」のインスタ投稿がこっそり削除…「ありのままを発信する責任がある」語っていた“SNSとの向き合い方”
NEWSポストセブン
出席予定だったイベントを次々とキャンセルしている米倉涼子(時事通信フォト)
《米倉涼子が“ガサ入れ”後の沈黙を破る》更新したファンクラブのインスタに“復帰”見込まれる「メッセージ」と「画像」
NEWSポストセブン
訃報が報じられた、“ジャンボ尾崎”こと尾崎将司さん
亡くなったジャンボ尾崎さんが生前語っていた“人生最後に見たい景色” 「オレのことはもういいんだよ…」
NEWSポストセブン
峰竜太(73)(時事通信フォト)
《3か月で長寿番組レギュラー2本が終了》「寂しい」峰竜太、5億円豪邸支えた“恐妻の局回り”「オンエア確認、スタッフの胃袋つかむ差し入れ…」と関係者明かす
NEWSポストセブン
2025年11月には初めての外国公式訪問でラオスに足を運ばれた(JMPA)
《2026年大予測》国内外から高まる「愛子天皇待望論」、女系天皇反対派の急先鋒だった高市首相も実現に向けて「含み」
女性セブン
夫によるサイバーストーキング行為に支配されていた生活を送っていたミカ・ミラーさん(遺族による追悼サイトより)
〈30歳の妻の何も着ていない写真をバラ撒き…〉46歳牧師が「妻へのストーキング行為」で立件 逃げ場のない監視生活の絶望、夫は起訴され裁判へ【米サウスカロライナ】
NEWSポストセブン
シーズンオフを家族で過ごしている大谷翔平(左・時事通信フォト)
《お揃いのグラサンコーデ》大谷翔平と真美子さんがハワイで“ペアルックファミリーデート”、目撃者がSNS投稿「コーヒーを買ってたら…」
NEWSポストセブン
愛子さまのドレスアップ姿が話題に(共同通信社)
《天皇家のクリスマスコーデ》愛子さまがバレエ鑑賞で“圧巻のドレスアップ姿”披露、赤色のリンクコーデに表れた「ご家族のあたたかな絆」
NEWSポストセブン
硫黄島守備隊指揮官の栗林忠道・陸軍大将(写真/AFLO)
《戦後80年特別企画》軍事・歴史のプロ16人が評価した旧日本軍「最高の軍人」ランキング 1位に選出されたのは硫黄島守備隊指揮官の栗林忠道・陸軍大将
週刊ポスト