詫び状を郵送
突然の逮捕劇に一番びっくりしているのは、山口組弘道会関係者かもしれない。
竹中四代目が殺されてから1か月も経たない1985年2月23日、山口組本部の岸本才三組長宛に、ヒットマンの地下司令官である後藤容疑者から詫び状が郵送されてきた。
「今般、私達の犯したことで山口組に多大な迷惑をかけたことをお詫び申し上げます。また、世間に不安を巻き起こしたことを反省し、後藤組一同カタギになるつもりです(以下略)」
詫び状の背景には、後藤容疑者が率いる後藤組若頭の拉致事件があった。
まずは後藤組若頭の知人がさらわれ、津市のホテルに監禁された。その身柄を餌に、今度は若頭本人が呼び出された。拳銃を突き付け、黒いセドリックに押し込んで拉致したのは、現在、六代目山口組若頭補佐で、弘道会三代目の竹内照明会長をリーダーとする報復部隊だ。その後、後藤容疑者は拉致された若頭の解放と引き替えに引退・解散し、詫び状を山口組に送った……というわけである。
こうして一和会はトップとナンバー2を殺害するという大戦果を挙げながら次第に劣勢となっていった。
以降、実に40年もの間、後藤容疑者の行方は分からなかった。亡霊にも言い分はあるだろう。ヒットマンの4人は全員無期懲役となり、今も獄中にいる。ぜひとも真実を明かし、骨肉の殺し合いに終止符を打ってほしい。
【プロフィール】
鈴木智彦(すずき・ともひこ)/1966年北海道生まれ。フリーライター。日本大学芸術学部写真学科除籍。ヤクザ専門誌『実話時代』編集部に入社。『実話時代BULL』編集長を務めた後、フリーに。主な著書に『サカナとヤクザ』『ヤクザときどきピアノ』など。
※週刊ポスト2024年9月20・27日号