国内

〔佐藤優×山口二郎〕岸田政権で進んだ「派閥の脱個性化」解散しても残る“派閥のようなもの”

山口氏と佐藤氏

山口氏と佐藤氏

 自民党総裁選の火ぶたが切られ、岸田文雄政権がひっそりと幕を下ろそうとしている。新総裁を迎える前に、岸田政権とは何だったのか総括すべきではないか。佐藤優・元外務省主任分析官と山口二郎・法政大学教授が指摘する(共著『自民党の変質』祥伝社新書より抜粋。前後編の後編。前編から読む)。

 * * *

派閥の効用(佐藤)

 岸田さんが総理総裁になって、もっとも変わったのは、派閥のありようです。派閥の解散が決まる前から、すでに自民党の派閥は変質していたのです。派閥がなくなれば、総裁選も党内でのポピュリズム選挙になるでしょう。

 山口さんも言われたように、派閥には弊害ばかりでなく、効用もあります。

 一九九四年だったと記憶していますが、私がモスクワの日本大使館に勤務していた時、政治学者の佐藤誠三郎さん(東京大学名誉教授。大平正芳内閣[一九七八~一九八〇年]・中曽根康弘内閣[一九八二~一九八七年]のブレーンと言われる)が来訪され、当時の渡邉幸治大使と一緒に食事をしたことがあります。その席で、派閥や日本の政局が話題になり、渡邉大使は佐藤さんにこう尋ねたのです。

「橋本龍太郎さん(第八二~八三代首相)は、次の総理総裁になりますか?」
 佐藤さんは即答しました。
「本人以外の全員が反対するでしょう」

 私は、この言葉が非常に印象に残っています。当時の橋本さんは国民の人気は高かったですが、派閥の長ではありませんでした(二〇〇〇年に平成研の会長)。要するに──派閥の長になれないような人物は人間性に問題がある。そんな人が総裁選に出ても応援する人はいないよ──と、佐藤さんは言ったわけです。

 派閥とは、政党という中間団体のなかの第二次中間団体です。そこで日常的に他者と接することによって、個々の人間性、リーダーシップ、見識、国家観などがわかってくる。また、派閥の長になる人は、長たるべき素養を備えていることが多い。

 ですから、派閥内で政治家同士、切磋琢磨することは政治家にとって必ずしもマイナス面ばかりでなく、効用もあると思います。

関連記事

トピックス

六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
六代目山口組が住吉会最高幹部との盃を「突然中止」か…暴力団や警察関係者に緊張が走った竹内照明若頭の不可解な「2度の稲川会電撃訪問」
NEWSポストセブン
浅香光代さんと内縁の夫・世志凡太氏
《訃報》コメディアン・世志凡太さん逝去、音楽プロデューサーとして「フィンガー5」を世に送り出し…直近で明かしていた現在の生活「周囲は“浅香光代さんの夫”と認識しています」
NEWSポストセブン
警視庁赤坂署に入る大津陽一郎容疑者(共同通信)
《赤坂・ライブハウス刺傷で現役自衛官逮捕》「妻子を隠して被害女性と“不倫”」「別れたがトラブルない」“チャリ20キロ爆走男” 大津陽一郎容疑者の呆れた供述とあまりに高い計画性
NEWSポストセブン
無銭飲食を繰り返したとして逮捕された台湾出身のインフルエンサーペイ・チャン(34)(Instagramより)
《支払いの代わりに性的サービスを提案》米・美しすぎる台湾出身の“食い逃げ犯”、高級店で無銭飲食を繰り返す 「美食家インフルエンサー」の“手口”【1か月で5回の逮捕】
NEWSポストセブン
温泉モデルとして混浴温泉を推しているしずかちゃん(左はイメージ/Getty Images)
「自然の一部になれる」温泉モデル・しずかちゃんが“混浴温泉”を残すべく活動を続ける理由「最初はカップルや夫婦で行くことをオススメします」
NEWSポストセブン
宮城県栗原市でクマと戦い生き残った秋田犬「テツ」(左の写真はサンプルです)
《熊と戦った秋田犬の壮絶な闘い》「愛犬が背中からダラダラと流血…」飼い主が語る緊迫の瞬間「扉を開けるとクマが1秒でこちらに飛びかかってきた」
NEWSポストセブン
高市早苗総理の”台湾有事発言”をめぐり、日中関係が冷え込んでいる(時事通信フォト)
【中国人観光客減少への本音】「高市さんはもう少し言い方を考えて」vs.「正直このまま来なくていい」消えた訪日客に浅草の人々が賛否、着物レンタル業者は“売上2〜3割減”見込みも
NEWSポストセブン
全米の注目を集めたドジャース・山本由伸と、愛犬のカルロス(左/時事通信フォト、右/Instagramより)
《ハイブラ好きとのギャップ》山本由伸の母・由美さん思いな素顔…愛犬・カルロスを「シェルターで一緒に購入」 大阪時代は2人で庶民派焼肉へ…「イライラしている姿を見たことがない “純粋”な人柄とは
NEWSポストセブン
真美子さんの帰国予定は(時事通信フォト)
《年末か来春か…大谷翔平の帰国タイミング予測》真美子さんを日本で待つ「大切な存在」、WBCで久々の帰省の可能性も 
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン
インドネシア人のレインハルト・シナガ受刑者(グレーター・マンチェスター警察HPより)
「2年間で136人の被害者」「犯行中の映像が3TB押収」イギリス史上最悪の“レイプ犯”、 地獄の刑務所生活で暴力に遭い「本国送還」求める【殺人以外で異例の“終身刑”】
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
“関東球団は諦めた”去就が注目される前田健太投手が“心変わり”か…元女子アナ妻との「家族愛」と「活躍の機会」の狭間で
NEWSポストセブン