派閥の脱個性化(山口)

 自民党の派閥は変質しました。岸田さんは、そのシンボルのような存在です。一言で表すと、「脱個性化」です。

 かつての派閥は、総理総裁になりたいボスが一族郎党を集めてつくった「軍団」でした。軍団を維持するには子分に配るカネが必要ですから、ボスには集金能力が求められました。この構図は「三角大福」=三木武夫(第六六代首相)・田中角栄(田中眞紀子元外相の父、第六四~六五代首相)・大平正芳・福田赳夫(福田康夫元首相の父、第六七代首相)や「安竹宮」=安倍晋太郎(安倍晋三元首相の父、中曽根内閣で外務大臣)・竹下登・宮澤喜一、そして渡辺美智雄さん(宮澤内閣で副首相・外務大臣)くらいまで存続しました。

 今は、このような「上から下へ」のカネの流れ・配分ではありません。政治資金パーティ券を売りさばき、上納させるのですから、マルチビジネスのようです。軍団としての派閥は崩壊しました。特に小泉政権以降、派閥は意味を失っていきました。

 佐藤さんから橋本龍太郎さんの話が出たので、当時の政局を確認しておきましょう。

 一九九五年九月二二日の自民党総裁選では、一九九三年から総裁だった河野洋平さん(河野太郎デジタル相の父)が立候補を断念。小渕派(現・平成研)が橋本さんを担いで総裁にしました。河野さんは自社さ連立政権で副首相・外務大臣、橋本さんは通産大臣(通商産業大臣、現・経済産業大臣)です。

 一九九三年から一九九六年にかけて、日本の政局は激しく流動化しました。まず一九九三年八月、不信任案を受けた宮澤喜一内閣が退陣し、日本新党代表の細川護熙さん(第七九代首相)を首班とする連立政権(日本新党、社会党、新生党、公明党、民社党、新党さきがけ、社会民主連合、民主改革連合)が発足します。五五年体制を築いた自民党は、三八年ぶりに野党になりました。

 しかし細川内閣は、わずか一〇カ月後の一九九四年四月に総辞職。次いで新生党党首の羽田孜さんが第八〇代首相に指名されて組閣しますが、社会党(一九九六年一月から社会民主党=社民党)が連立から離脱したことで、こちらも二カ月あまりで退陣(六月三〇日)しました。そして誕生したのが、前述の自民党、社会党、新党さきがけによる、自社さ連立政権です。首相(第八一代)には社会党委員長の村山富市さんが就きました。村山内閣の発足で、自民党は政権与党に戻ります。

 村山内閣では、「主要閣僚を自民党から出してもらわなければ政権を維持できない」という判断が働きました。そこで、河野さんが外務大臣、橋本さんが通産大臣になったのです。他に自民党からは、前田勲男さん(法務大臣)、与謝野馨さん(文部大臣)、大河原太一郎さん(農林水産大臣)、亀井静香さん(運輸大臣)、野中広務さん(自治大臣)らが入閣しました。

 ところが、その村山さんも、首相就任から一年半で内閣総辞職を表明します(一九九六年一月五日)。この時の記者会見で、村山さんは次のようなことを述べました。

関連記事

トピックス

ビアンカ・センソリ(カニエのインスタグラムより)
《過激ファッション》カニエ・ウェストの17歳年下妻、丸出しドレスで『グラミー賞』授賞式に予告なく登場「公然わいせつ」「レッドカーペットから追放すべき」と炎上
NEWSポストセブン
女性皇族の健全な未来は開かれれるのか(JMPA)
愛子さま、佳子さま“結婚後も皇族としての身分保持”案の高いハードル 配偶者や子供も“皇族並みの行動制限”、事実上“女性皇族に未婚を強制”という事態は不可避
女性セブン
車から降りる氷川きよし(2025年2月)
《デビュー25周年》氷川きよし、“名前が使えない”騒動を乗り越えて「第2章のスタート」 SMAPゆかりの店で決起集会を開催
女性セブン
第7回公判では田村瑠奈被告の意外なスキルが明かされた(右・HPより)
《モンスターに老人や美女も…》田村瑠奈被告、コンテストに出品していた複数の作品「色使いが独特」「おどろおどろしい」【ススキノ首切断事件裁判】
NEWSポストセブン
大きな“難題”に直面している巨人の阿部慎之助・監督(時事通信フォト)
【70億円補強の巨人・激しいポジション争い】「レフト岡本」で外野のレギュラー候補は9人、丸が控えに回る可能性 捕手も飽和状態、小林誠司は出番激減か
週刊ポスト
『なぎチャイルドホーム』の外観
《驚異の出生率2.95》岡山の小さな町で次々と子どもが産まれる秘密 経済支援だけではない「究極の少子化対策」とは
NEWSポストセブン
出廷した水原一平被告(共同通信フォト)
【独自】《水原一平、約26億円の賠償金支払いが確定へ》「大谷翔平への支払いが終わるまで、我々はあらゆる手段をとる」連邦検事局の広報官が断言
NEWSポストセブン
10月1日、ススキノ事件の第4回公判が行われた
《お嬢さんの作品をご覧ください》戦慄のビデオ撮影で交わされたメッセージ、田村浩子被告が恐れた娘・瑠奈被告の“LINEチェック”「送った内容が間違いないかと…」【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
中居の恋人のMさん(2025年1月)
《ダンサー恋人が同棲状態で支える日々》中居正広、引退後の暮らし 明かしていた地元への思い、湘南エリアのマンションを購入か 
女性セブン
大木滉斗容疑者(共同通信)
《バラバラ遺棄後に50万円引き出し》「大阪のトップ高校代表で研究成果を発表」“秀才だった”大木滉斗(28)容疑者が陥った“借金地獄”疑惑「債権回収会社が何度も…」
NEWSポストセブン
2月5日、小島瑠璃子(31)が自身のインスタグラムを更新し、夫の死を伝えた(時事通信フォト)
小島瑠璃子(31)夫の訃報前に“母子2人きり帰省”の目撃談「ここ最近は赤ちゃんを連れて一人で…」「以前は夫婦揃って頻繁に帰省していた」
NEWSポストセブン
ファンから心配の声が相次ぐジャスティン・ビーバー(Xより)
《ジャスティン・ビーバー(30)衝撃の激変》「まるで40代」「彼からのSOSでは」“地獄の性的パーティー”で逮捕の大物プロデューサーが引き金か
NEWSポストセブン