では、そういうことが二度と起こらないように反省するということはどういうことか? 具体的な行動で言えば、報道部門と芸能部門を切り離し分社化することだろう。つまり、別々の会社にするということだ。じつは世界の先進国ではこれがあたり前で、私の知る限り日本だけがそういうバカなことをやっているのである。

 だから逆にフジが率先して分社化を実行すれば、「ジャニーズ事件不報道のような恥ずべき事態が起こる可能性がもっとも少ない報道機関は、フジテレビです」と胸を張って主張できるし、「TBSさん、日本テレビさん、テレビ朝日さん、まだ分社化してないんですか? ジャニーズ問題について全然反省していませんね」と言い返すこともできる。視聴者がどちらを信頼するか、言うまでも無いことだろう。つまり、処方箋の第一項目は報道部門と芸能部門を切り離して分社化する、である。

 そして次は、記者クラブ問題である。これはもう私が二十年以上前から言い続けていることだが、日本には新聞も含めたマスコミ機関が主要官庁あるいは地方自治体の庁舎のなかに記者クラブを置き(官庁は都心の一等地にあるが、記者クラブ側は家賃などは一切払っていない)、記者を常駐させて官僚から情報を独占的に「いただいている」。ここに入れるのは「一流マスコミ」だけであり、週刊誌やフリーランサーの記者などは入れない。

 だから官僚はマスコミを洗脳したり誘導したりできる。財務省などはその典型であり、だからこそ経済アナリストの故・森永卓郎さん(ご冥福を心よりお祈りする)らが必死に訴えても日本の状況は変わらない。前にも述べたが、中国の香港支配が露骨になったとき、これでは自由な報道ができないと『ニューヨーク・タイムズ』が「デジタルニュース部門」の移転先に選んだのは東京では無くソウルであった。

 韓国の報道にもいろいろ問題があることは事実だが、少なくとも会見は日本よりはるかにオープンでフリーランサーも審査を通れば大統領官邸に入れる。日本は首相官邸も含めあまりにもクローズド(閉鎖的)なので、東京では無くソウルが選ばれたのだ。一月十七日に開かれたフジテレビの港浩一社長(当時)の第一回記者会見は、「閉鎖的」「カメラが入れない」「紙芝居会見だ」など既成のマスコミにさんざん悪口を言われたが、私に言わせれば「よく言うよ」という感じである。

 記者クラブの会見では原則的にカメラを入れないのがあたり前の「身内」だけの閉鎖的会見だ。「紙芝居会見」という批判は動画が撮れず写真だけということだろうが、官庁にある記者クラブの会見は写真すら撮れない。つまり、「紙芝居以下」なのである。そんな官庁との癒着体制を維持しておいて、よくも同じ口でフジの批判ができるものだ。つまり、処方箋の第二項目は「記者クラブから脱退する」である。

 第三の項目は、中央官庁からの天下り問題である。これもずっと以前に明治編で述べたことだが、中央官庁に勤めていたベテラン官僚が定年近くになって関連企業に天下りすることは、開発途上国ならいまでも有効な産業開発モデルである。そうした国々にはそもそも高等教育を受けたエリートが少ないからだ。しかし、日本のような先進国はまったく事情が違う。

 とくに監督官庁から関連企業への天下りは官民の癒着を招き、とくに報道機関においては政府への忖度無き報道の障害となる。だから新しい「フジ・ニュース・ネットワーク」では、「天下り官僚は一切受け付けない」と表明すればいい。処方箋の第三項目は、「官僚の天下りを拒否する」である。

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