スポーツ
人生で残酷なことはドラゴンズに教えられた

昭和の野球少年たちのバイブル『巨人の星』でも軽視されていた…中日ドラゴンズはファンに「人生で残酷なこと」を教えてくれた【中日ドラゴンズに学ぶ人生の教訓】

(時事通信フォト)

それでもドラゴンズファンはやめられない(時事通信フォト)

 幼少期からの筋金入り中日ファンの大学教授が著した異色の新書『人生で残酷なことはドラゴンズに教えられた』では、「日中問題」の研究者である富坂聰氏(拓殖大学海外事情研究所教授)が、ドラファンが長年背負ってきた“残酷な歴史”を綴っている。シリーズ第10回では国民的野球漫画『巨人の星』における中日の扱いについて苦言を呈する。(シリーズ第10回。第1回から読む

 * * *
 中日ドラゴンズがどれほど強くても、アナウンサーは巨人対阪神戦を「さあ、伝統の一戦です」と繰り返す。巨人のV10を阻止したのは中日という歴史的事実があっても、「伝統の一戦、巨人対阪神」は変わらない。首位(たいていは巨人)との対戦成績でどんなに中日が勝ち越しても、「伝統の一戦、巨人対阪神です」。

 中日対巨人……、はい、非伝統の一戦です。

 こういう無意識下の「軽視」は、じつはそこらじゅうに転がっている。

 たとえば、昭和の野球少年たちのバイブル、『巨人の星』だ。この漫画、昭和のオヤジたちの人生をどれほど狂わせたことだろうか。

 主人公は巨人のエースとなるべく努力を重ね、奮闘する星飛雄馬。物語は父と子の愛憎劇だ(もちろんフィクションだが)。飛雄馬は巨人を日本一にするため、3つの魔球を生み出し、敵チームの主力打者をバッタバッタと切って捨てる。

 魔球は、ビーンボールギリギリで打者のバットに当てる大リーグボール1号から、通称・消える魔球の大リーグボール2号。そしてスイングの風圧でバットをよけてしまうという超軽量の大リーグボール3号だ。

 いずれもデタラメな魔球だが、少年たちは夢中になった。大リーグボール1号は子供が投げると間違いなくデッドボールか暴投。2号は足を高く上げて土埃を巻き上げるため、誰かが「痛い」と目を押さえて試合が中断するのがお約束だった。なかにはバッターが目を押さえている間に何球も投げて「はい、三振」ってやるズルいやつもいた。3号はただのスローボールだから、簡単に打たれて終わり。すべてあるあるだ。

星飛雄馬を打ち砕いたのはドラゴンズなのに

 漫画の話に戻ろう。

 飛雄馬には当然ライバルたちがいて、魔球は彼らに打ち砕かれる。飛雄馬の最大のライバルといえば、やっぱり阪神の選手になる。その名も花形満。イケメンだ。

 だが、飛雄馬の魔球を打ち砕くという意味では、圧倒的な存在感を示すのが実は中日だ。

 大リーグボール1号は、巨人からライバルチームの中日に移籍してきた飛雄馬の父・一徹が、米大リーグのセントルイス・カージナルスに所属していた通称「野球ロボット」のアームストロング・オズマを呼び寄せ、オズマが特訓の末に身に付けた「見えないスイング」によって粉砕される。

 大リーグボール2号は、花形が場外ホームランを放り込んで飛雄馬に引導を渡すのだが、最後の大リーグボール3号に立ちはだかるのは、またまた中日の一徹だ。飛雄馬の高校時代からの親友・伴宙太を巨人から呼び寄せ、友情にひびを入れながら息子の魔球までを葬り去ってしまうというバッドエンドだ。

 つまり、巨人の星を目指す飛雄馬と死闘を演じるのは、圧倒的にブルーのユニフォームの中日ドラゴンズなのだ。そうなのだが、肝心のペナントレースは巨人と阪神が激しい首位争いを演じているって設定だ。

 おーい!

関連キーワード

関連記事

トピックス

現地取材でわかった容疑者の素顔とは──(勤務先ホームページ/共同通信)
【伊万里市強盗殺人事件】同僚が証言するダム・ズイ・カン容疑者の素顔「無口でかなり大人しく、勤務態度はマジメ」「勤務外では釣りや家庭菜園の活動も」
NEWSポストセブン
中村七之助の熱愛が発覚
《元人気芸妓とゴールイン》中村七之助、“結婚しない”宣言のルーツに「ケンカで肋骨にヒビ」「1日に何度もキス」全力で愛し合う両親の姿
NEWSポストセブン
週刊ポストの名物企画でもあった「ONK座談会」2003年開催時のスリーショット(撮影/山崎力夫)
《巨人V9の真実》400勝投手・金田正一氏が語っていた「長嶋茂雄のすごいところ」 国鉄から移籍当初は「体の硬さ」に驚くも、トレーニングもケアも「やり始めたら半端じゃない」
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(HP/Xより)
《まさかの“続投”表明》田久保眞紀市長の実母が語った娘の“正義感”「中国人のペンションに単身乗り込んでいって…」
NEWSポストセブン
大谷が購入したハワイの別荘の広告が消えた(共同通信)
【スクープ】大谷翔平「25億円ハワイ別荘」HPから本人が消えた! 今年夏完成予定の工期は大幅な遅れ…今年1月には「真美子さん写真流出騒動」も
NEWSポストセブン
フランクリン・D・ルーズベルト元大統領(写真中央)
【佐藤優氏×片山杜秀氏・知の巨人対談「昭和100年史」】戦後の日米関係を形作った「占領軍による統治」と「安保闘争」を振り返る
NEWSポストセブン
運転席に座る広末涼子容疑者
《追突事故から4ヶ月》広末涼子(45)撮影中だった「復帰主演映画」の共演者が困惑「降板か代役か、今も結論が出ていない…」
NEWSポストセブン
江夏豊氏(右)と工藤公康氏のサウスポー師弟対談(撮影/藤岡雅樹)
《サウスポー師弟対談》江夏豊氏×工藤公康氏「坊やと初めて会ったのはいつやった?」「『坊や』と呼ぶのは江夏さんだけですよ」…現役時代のキャンプでは工藤氏が“起床係”を担当
週刊ポスト
殺害された二コーリさん(Facebookより)
《湖の底から15歳少女の遺体発見》両腕両脚が切断、背中には麻薬・武装組織の頭文字“PCC”が刻まれ…身柄を確保された“意外な犯人”【ブラジル・サンパウロ州】
NEWSポストセブン
山本由伸の自宅で強盗未遂事件があったと報じられた(左は共同、右はbackgrid/アフロ)
「31億円豪邸の窓ガラスが破壊され…」山本由伸の自宅で強盗未遂事件、昨年11月には付近で「彼女とツーショット報道」も
NEWSポストセブン
佳子さまも被害にあった「ディープフェイク」問題(時事通信フォト)
《佳子さまも標的にされる“ディープフェイク動画”》各国では対策が強化されるなか、日本国内では直接取り締まる法律がない現状 宮内庁に問う「どう対応するのか」
週刊ポスト
『あんぱん』の「朝田三姉妹」を起用するCMが激増
今田美桜、河合優実、原菜乃華『あんぱん』朝田三姉妹が席巻中 CM界の優等生として活躍する朝ドラヒロインたち
女性セブン