ライフ

《自然妊娠神話の弊害》「不妊治療をして産まれたって人に知られたくない」女性たちが感じている“産みたいと気軽に言えない空気感”の正体とは

不妊治療で子供を授かる夫婦は珍しくない(写真:イメージマート)

不妊治療で子供を授かる夫婦は珍しくない(写真:イメージマート)

「約10人に1人が不妊治療ベイビー」──日本産科婦人科学会によると、2022年の体外受精児は7万7206人と過去最多を更新。同年の日本の出生数は77万759人であるため、体外受精での誕生した子どもは約10人に1人だ。

 しかしながら、「『不妊治療をして子どもが産まれたってことは、できるだけ人に知られたくない』という声が上がっている」というのは、フリーランス記者・松岡かすみ氏だ。これだけ不妊治療が一般的になってなお、ネガティブな空気感があるのはなぜだろう。

 松岡氏の著書『-196℃の願い 卵子凍結を選んだ女性たち』(朝日新聞出版)より、不妊治療に抵抗感を持つ理由についてお届けする。(同書より一部抜粋して再構成)【全4回の第3回。第2回を読む】

 * * *
「卵子凍結したっていうと、老若男女問わず、本当にリアクションが大きくて。その反応を見て、ことの大きさに気がついた感じ。そんなにみんなが食いつく話題なんだと思いました」

 3年前に卵子凍結をした、ある30代女性はこう話す。卵子凍結したあと、周囲にその経験を話すと、男女や年齢を問わず、高い関心を持って聞いてくれる人が予想以上に多いという。自分では卵子凍結を、そこまで大きな決断と捉えていなかったため、周囲の反応を見ると「そんなに大層なことなのか?」と疑問に思ってしまう自分もいるという。

 裏を返せば、それだけオープンに話す人が少ない話題とも言えるかもしれない。女性は、「出産に対する厳しい目線や、“産みたい”とは気軽に言えない空気感を、社会に感じる」とも話した。

 産みたいとは気軽に言えない空気。この言葉を聞いて、卵子凍結や不妊治療の取材を通じて出会った、何人もの女性が思い浮かんだ。不妊治療について悩んでいても、人に相談しづらかったり、産みたいのに産めないことを恥のように思ってしまっている人というのは、想像以上に多いのではないかと思う。

「不妊治療を知られたくない」葛藤する女性たち

「不妊治療をして子どもが産まれたってことは、できるだけ人に知られたくない」というのは、不妊治療を経て出産した何人かの女性から聞かれた言葉だ。自然妊娠した人に劣等感を抱いたり、なぜ自分は妊娠に治療が必要なのかと自己嫌悪に陥ったり。「治療をしないと妊娠できない=自分が生物として、致命的な欠陥があるのと同じような気がする」と話した人もいた。

 不妊治療をして子どもを産んだことを伏せたい理由として、「生まれてきた子どもに対して、何かマイナスな影響が出るのが怖いから」という理由も聞かれた。つまり、自分の子どもが他人から“不妊治療をして産まれた子”として見られることで、子どもに何か不利益が出ないかを危惧しているという。

「例えば、子どもに発達障害があったとして、その子が不妊治療をして生まれたと知られたら、どこかで“ああ、やっぱり治療の影響が出るのか”って思う人っていると思う」と話した30代前半の女性もいた。

関連記事

トピックス

お笑いコンビ「ガッポリ建設」の室田稔さん
《ガッポリ建設クズ芸人・小堀敏夫の相方、室田稔がケーブルテレビ局から独立》4月末から「ワハハ本舗」内で自身の会社を起業、前職では20年赤字だった会社を初の黒字に
NEWSポストセブン
”乱闘騒ぎ”に巻き込まれたアイドルグループ「≠ME(ノットイコールミー)」(取材者提供)
《現場に現れた“謎のパーカー集団”》『≠ME』イベントの“暴力沙汰”をファンが目撃「計画的で、手慣れた様子」「抽選箱を地面に叩きつけ…」トラブル一部始終
NEWSポストセブン
母・佳代さんのエッセイ本を絶賛した小室圭さん
小室圭さん “トランプショック”による多忙で「眞子さんとの日本帰国」はどうなる? 最愛の母・佳代さんと会うチャンスが…
NEWSポストセブン
春の雅楽演奏会を鑑賞された愛子さま(2025年4月27日、撮影/JMPA)
《雅楽演奏会をご鑑賞》愛子さま、春の訪れを感じさせる装い 母・雅子さまと同じ「光沢×ピンク」コーデ
NEWSポストセブン
自宅で
中山美穂はなぜ「月9」で大記録を打ち立てることができたのか 最高視聴率25%、オリコン30万枚以上を3回達成した「唯一の女優」
NEWSポストセブン
「オネエキャラ」ならぬ「ユニセックスキャラ」という新境地を切り開いたGENKING.(40)
《「やーよ!」のブレイクから10年》「性転換手術すると出演枠を全部失いますよ」 GENKING.(40)が“身体も戸籍も女性になった現在” と“葛藤した過去”「私、ユニセックスじゃないのに」
NEWSポストセブン
「ガッポリ建設」のトレードマークは工事用ヘルメットにランニング姿
《嘘、借金、遅刻、ギャンブル、事務所解雇》クズ芸人・小堀敏夫を28年間許し続ける相方・室田稔が明かした本心「あんな人でも役に立てた」
NEWSポストセブン
第一子となる長女が誕生した大谷翔平と真美子さん
《真美子さんの献身》大谷翔平が「産休2日」で電撃復帰&“パパ初ホームラン”を決めた理由 「MLBの顔」として示した“自覚”
NEWSポストセブン
不倫報道のあった永野芽郁
《ラジオ生出演で今後は?》永野芽郁が不倫報道を「誤解」と説明も「ピュア」「透明感」とは真逆のスキャンダルに、臨床心理士が指摘する「ベッキーのケース」
NEWSポストセブン
渡邊渚さんの最新インタビュー
元フジテレビアナ・渡邊渚さん最新インタビュー 激動の日々を乗り越えて「少し落ち着いてきました」、連載エッセイも再開予定で「女性ファンが増えたことが嬉しい」
週刊ポスト
主張が食い違う折田楓社長と斎藤元彦知事(時事通信フォト)
【斎藤元彦知事の「公選法違反」疑惑】「merchu」折田楓社長がガサ入れ後もひっそり続けていた“仕事” 広島市の担当者「『仕事できるのかな』と気になっていましたが」
NEWSポストセブン
お笑いコンビ「ダウンタウン」の松本人志(61)と浜田雅功(61)
ダウンタウン・浜田雅功「復活の舞台」で松本人志が「サプライズ登場」する可能性 「30年前の紅白歌合戦が思い出される」との声も
週刊ポスト