杉山夫妻と2人の子どもたち
──なにがあったんですか?
瑞希さん「私、家を出て行ったんですよ」
──えっ!
勇人さん「本当に、『ちっくすパック』のプロジェクトが始まる1年半ぐらい前か。自分がどすんと沈んじゃって。売上もすごい下がっちゃうし、小田原かまぼこの需要も落ちてきて、『もうどうにもならない』と。先代社長と廃業の話までしていて……そんななか、妻が出て行っちゃったんです。だからその日の夜、僕も人生を終わらせようと思って……」
──えっ……。
勇人さん「誰も見ていないところで『もうダメだ。これ以上、生きていけない』って、製造しながら泣き崩れちゃって。でも誰にも何も言わず終わらせるのは違うって思ったので、山梨に嫁いだ姉に泣きながら電話したんです。そうしたら『今から迎えにいくから、そこで待ってろ』って。
それで姉が助けてくれて、山梨に連れて行かれたんですよ。監視されながら、姉の家で1泊して。そのときも『せっかく結婚して、一緒に小田原まで来てくれたんだし、妻にも人生を楽しんでもらいたい』って考えていて、でも自分のせいで苦しめてしまっているとも思っていたので……」
──そんな状況でも、ずっと瑞希さんのことを考えていたんですね。
勇人さん「『伊勢兼商店』の仕事を前向きにやってもらうにはどうしたらいいだろうって、いろいろ考えたなかで思いついたのが、“美ボディコンテスト”に出てもらうということだったんです。そうしたら、妻も楽しんでもらえるんじゃないかなと」