続々と会場入りする直参組長ら

続々と会場入りする直参組長ら

1年ぶりに姿を見せた「分裂抗争のキーマン」

 同日に稲川会が行なったのは清田総裁の「組葬」。業界的には家族葬を行なった後に、組長が喪主となり行なう葬儀だ。

「他団体からも弔問に訪れたいという声が多かったようですが、大型連休が近く、公共交通機関の混乱や一般市民への影響を少なくするために、他団体の弔問は後日に開く予定です。

 稲川会は本部が東京都港区で、組行事を行なう“稲川会館”も横浜市と一般市民が多いエリアにあるため周囲への配慮に厳しい組織として知られている」(前出・実話誌記者)

 会場となった事務所には、早朝から警視庁、神奈川県警、マスコミが駆けつけていた。黒いスーツ、黒いネクタイを着用した組員も会場内外で忙しなく動き、直参組長らを迎える準備をしている。なかには「風紀」と書かれた黄色い腕章をつけて車両誘導する組員もいた。交通渋滞を避けるためのようで、送迎の車が路上駐車をしないよう誘導し、直参組長らも大通りで車を降り、敷地内には徒歩で入る。

 10時5分、喪服姿の内堀会長が到着。数分後、貞方留義理事長もセンチュリーで到着。その後も直参組長らが相次いで会場入りしていた。

 現場が緊張した空気に包まれたのは10時30分ごろ。会場入りした直参組長が建物外に姿を現し、整列、発声を始めたのだ。いったい誰が訪れるのか──と警察とメディアがざわつき出した15分後。

 福岡の指定暴力団・道仁会の小林哲治四代目会長が姿を現した。彼もまた“九州のドン”として知られ、山口組分裂抗争で動向が常に注目されていた人物だ。

「小林四代目は長年、六代目山口組と神戸山口組の間に入って、抗争終結に向けて動いていたことで知られる。2021年ごろから神戸山口組の寺岡修若頭(当時)と会談を重ねていて、井上邦雄組長とも何度か会談をし、井上組長に引退を持ちかけている。2023年8月にも小林会長は『そろそろ楽になったらどうですか』と再度、引退を持ちかけたものの、断られたという話が伝わっています。

 他組織のトップに引退を持ちかけられるのも、道仁会が抗争を繰り返してきた歴史があるから。山口組とも『山道抗争』を繰り広げ、2000年代には九州誠道会(解散)と激しい抗争を繰り広げ、2013年の抗争終結宣言までに47件の抗争事件、14名の死者を出しました。小林四代目は昨年5月に会長を譲って以降、表舞台に出ることはほとんどなかったため、姿を見せたことに驚きの声が広がった」(同前)

 小林四代目は15分ほどの弔問となり、内堀会長も見送りに出た。その後、僧侶が訪れ、「組葬」が開始されたと見られる。棺に納めるための花、霊柩車、直参を斎場に連れるバスなどが続々と会場に入る。

 14時すぎ、内堀会長や直参組長、組員が会場外に現れ、清田総裁の出棺が始まる。内堀会長は位牌を持ち、直参組長は通り過ぎる棺に花を入れていた。

 棺が霊柩車に収まり、内堀会長は霊柩車の助手席に搭乗。14時26分、長いクラクションに合わせて直参組長、組員が手を合わせ、霊柩車は出発した。

「近年は暴対法で大々的な葬儀を開くのは厳しくなっていて、功労者でも家族葬だけというケースも増えている。今回も提灯や花輪など大掛かりな飾りなどはなく、密葬に近い形式でしたが、直参組長全員が参加する『組葬』を実施できたのは清田総裁が紛れもなくヤクザ業界の“ドン”だった証拠でもある。稲川会は清田総裁の死去直前に大幅に人事を刷新しており、今後も注目が集まる」(同前)

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