18歳のころから銀座のキャバクラで働き始めていたAさん(インスタグラムより)
被告人はこれで交際終了かと思ったが、Aさんからその後、「入院時にしたことは水に流す」「私の夢のため人生を賭けてくれたら結婚するよ」と言われたという。
Aさんの夢はファッションショー「関西コレクション」のランウェイを歩くことだった。「関コレ」のスポンサー企業が販売しているシャンパンを多く注文すれば、その枠に入れる。そのためにバイクと車を売って欲しいと頼まれた。
被告人にとってバイクと車は命の次に大事とも言えるものであった。バイクの購入と改造費用に約500万円、車の購入と改造費用に約2000万円費やしてきた。希少価値もあり、現在同じものを揃えようとすると、4000万円かかると被告人は言う。しかし、迷わず「売る」と返事した。
弁護人「なんで即答で売ると?」
被告人「Aさんが大好きなのと、Aさんがランウェイを歩くのを自分も見たくて」
弁護人「言葉悪いですけど、営業トークとは微塵も思わなかったのですか」
被告人「出会って3年経ってたし、キャバクラと客の関係性でなく、配信者とリスナーって関係性なので、まさか騙されるとは思いませんでした」
弁護人「結婚するのにお金が必要だと言うのは、おかしくないですか」
被告人「店にお金をってことならおかしいと思いますが、Aさんの夢をかなえる手伝いということで疑いませんでした」
現金は数回に分けて、Aさんのマンション前で直接渡した。領収書はもらわず、振込も選択しなかった。理由は信用していたからという。しかし、その後、Aさんに携帯を渡した際に過去のLINEやりとりを全て消されたという。そこには現金を渡すまでの経緯が書かれていた。
2021年の12月に、Aさんはキャバクラ店をオープンさせる。しかしその後、二人の関係性は悪化したという——。
(後編につづく)
◆取材・文/普通(傍聴ライター)