昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
ときに耳にする「クマ被害」のニュース。最近では市街地で起きることも増えているという。野生のクマと接近した経験がある、女性セブンの名物ライター“オバ記者”こと野原広子氏が、昨今のクマ被害についてつづる。
40年たったいまも忘れられないあのニオイ
「クマに襲われて死亡」というニュースは、毎年のように流れてくる。それはたいがいの場合、キャンプ場だったり登山の途中だったりするから、「山に入るときは気をつけなくちゃね」と思ってきた。でも先日、北海道の市街地で起きたニュースには、いやもう「こんなことってある?」と二度見したよね。
新聞配達中の52才の男性が住宅地の家の玄関先でクマに襲われたというニュースよ。悲鳴を聞いた近所の人が駆けつけて、声を上げたり物干し竿でクマを突いたりして救出しようとしたけれど太刀打ちできない。100m以上引きずられてやぶの中で男性は絶命した、というけど、そのむごたらしさに言葉も出ない。その少し前には岩手県の民家の居間でクマに襲われた81才の女性が死亡したばかりだ。今年は人の生活圏でのクマ被害が多すぎるよ。
そして、そのたびに私はクマのニオイを思い出して身震いをするの。
あれは、毎年きのこ狩りに出かけていた30代初めのこと。私の先を猟犬と歩いていたYさんが「見て。クマがぬたを打った跡だよ」と言って、辺り一帯の低木ややぶをなぎ倒して平たくなった場所を指し示したの。「フンを見ると、今日のものじゃない。昨日か一昨日のものだから心配ないと思うけど、今日は奥に入るのはやめよう」と言うんだわ。それにしても、動物園で感じる動物臭を100倍濃くして、さらに強烈な生臭さを加えたような、ともかく約40年たったいまもあのニオイは忘れられない。