元・明石市長の泉房穂氏が上梓した新書『公務員のすすめ』
「反対側のカド」と話してオセロの盤面をひっくり返す
──冒頭で「4つに整理している」と言われたものの2つが、「政治の方向転換と国と地方の大再編」、そして「議員立法による超党派の機運」、ということですね。
そうです。続いて3つ目が「子ども」。今、「子ども政治塾」のような構想で動き始めています。まずは10月1日に小学生とその保護者を対象にした「こども国会見学会」を実施しました。11月からは、小学生に加えて中高生を対象にした見学会もスタートさせます。いずれは大学生や公務員志望の若者などを対象にした勉強会のようなものも企画していきたい。月一回くらいのペースで動かしていきたいと考えています。
くさいと思われるかもしれませんが、私は、政治とは未来そのものだと本気で思っています。政治を馬鹿にしたり斜に構えたりしているだけでは、この社会は良くならない。むしろ、政治というものを使えば、私たちの社会も私たちの未来も自分たちで変えていけるんだ、多くの人たちを救うことができるものなんだと若い人たちに伝えたい。そして、政治家を志す人たちを増やしていきたい。裏金だの特権だのというネガティブなイメージではなく、胸を張って、日本の未来をより良くするために政治家になるつもりです、と周囲に言えるような人たちを増やしていきたいと思っています。
そして4つ目が「情報発信」です。国政に携わる者として、国会のリアルというものをより多くの市民にきちんと伝えることも重要な役割だろうと私は考えています。
これまでも私は自分のSNSアカウントなどを通じて自分の思うところを発信してきましたが、加えて、この10月からはニッポン放送で、『泉房穂の情熱ラジオ』(毎週木曜日夕方6時から、キー局に加えて27地方局、37都府県で放送という冠番組をスタートさせました。昨年も毎週金曜に同様の番組を半年間やらせてもらっていましたが、今回は夕方6時から9時半までたっぷり3時間半もありゲストコーナーも拡充。ぜひ、いろんなテーマをじっくり取り上げたいと思っています。
党派を超えて、リスナーが話を聞いてみたいと思っているであろう多彩な政治家たちを招き、さらに文化人や評論家などもゲストに迎えて、テレビでは深く話せないような突っ込んだことも話題にしていきます。リスナーからの質問も、どんどんぶつけていきます。多くの人にとって遠い存在である政治をもっと身近なものに感じてもらいたい。その意味で、キー局に加えて全国の地方局にリアルタイムで届けられるラジオは、リスナーとの距離感も近く、政治のリアルを伝えていくのにぴったりだと思っています。
──今挙げられた4つは、それぞれにタイムスパンが異なります。毎週の情報発信。子どもや若者との対話は月1回のイメージ。超党派の機運を高めながらの議員立法は、それなりの時間が必要になる。1つ目の国と地域の大再編はものすごい長期戦ですよね。
2つ目の議員立法は、さすがに今日明日というわけにはいかないけれど、犯罪被害者支援などはできるだけ早く一定の形にしたいと思っています。一方で、国と地方のあり方の抜本的な再編なんて、そう簡単ではない。しかしながら、それは実現可能なものだという認識で今ようやくスタートを切った、という感覚でしょうか。
──ラジオのゲストも党派を大きく超えて考えておられるようですが、その辺りの動き方については賛否もあるでしょうか。
そうは言っても、差別のない優しくあたたかな社会に本当に変えていきたいと思っても、単にメッセージとして主張しているだけでは優しい社会は実現しません。この社会に暮らすすべての人が安心して笑顔で暮らせるようになることが、巡り巡って優しくあたたかな社会の実現につながるんです。今は、多くの人にとって生活は苦しいし将来は不安だし、ギリギリの状況が続いている。そんな中でいくら「優しくなってね」と言ったって無理です。その現実を見なければなりません。
対立構図がつくられやすい現実の中で、ある種の共闘できる部分をつかみ出して超党派での動きをつくらなければ、状況を大きく変えていくことはできません。自分に近い仲間たちと組んでいるだけでは、そこで動きが止まってしまうんです。
かなり違うスタンスの人、対極のカドにいるような人とも話をまとめられてこそ、ようやくオセロの盤面をひっくり返せる。対立の構図をかわしながら、いろんな人と対話の糸口を見出していく。そこに私の役割があるのではないかと考えて動いています。
(後編了。前編を読む)
構成/大友麻子 写真(人物)/野口 博(フラワーズ) 写真(書籍)/五十嵐美弥(小学館)
