安倍晋三・元首相の銃撃現場で取り押さえられる山上徹也被告(朝日新聞社/時事通信フォト)
安倍元首相の“落ち度”は認定されるのか
注目されるのは、被害者である安倍元首相の「落ち度」として何が認定されるのか、という点だ。仮に、安倍氏が統一教会の体制保護に寄与してきたという事実があったとしても、被害者としての「落ち度があった」とまでの判断はなされないだろう。安倍氏が直接、山上を挑発するなどしたわけはないからだ。
だが、山上が安倍氏について統一教会との関係や被害放置の状況をどのように認識していたかについては提示されるだろう。そして、山上がそう確信したことにどれほどの蓋然性があるのかについては斟酌される可能性がある。彼の認識が荒唐無稽なものではなく一定以上の合理性があったのか、山上がそう認識するだけの事実があったのかも焦点になる。その検証は法廷内で審理されるのものだけではなく、裁判の経過とともに私を含めたメディアが適宜報じていく必要がある。
検察側が請求している証人は目撃者、医師、警察官など。目撃者は事件発生時すぐ傍にいた佐藤啓参院議員、現在の役職は官房副長官である。他の証人は捜査に当たった警察官、手製銃の鑑定者、精神鑑定を行った医師や安倍氏を診た医師、解剖医などが想定される。銃撃手法や銃撃犯に関しては、山上以外の真犯人の存在を問う“陰謀論”もあったが、医師の証言などから安倍氏が命を落とした過程は詳細に示されるとみられる。スナイパー説などの陰謀論は沈静化していくだろう。
