(共同通信社)

逮捕時の山上徹也被告(共同通信社)

「なぜ夫が殺されなければならなかったのか…」

 裁判における大きなポイントは安倍昭恵氏の存在だ。彼女は事件後の講演会において「恨みという感情を持たないようにしている」「山上徹也被告と会ってみたい、なぜ夫が殺されなければならなかったのか知りたい」との旨を語っている。被害者参加制度を使って昭恵氏の代理人が書面を読み上げる方針と報じられているが、公判期日に出席する可能性や、被害者遺族が優先的に傍聴できることから傍聴席に昭恵氏が座るケースもあり得る。そのタイミングは被告人質問や最終被告人陳述が行われる期日となるだろう。もしそうなった場合、安倍昭恵氏を前に山上徹也被告が何を語り、銃撃を行った際の思いを彼がどう答えるのか、この裁判における重要な場面となるだろう。

 犯罪を起こし法規を破った被告人を、国が裁き適切な量刑を与えるのが刑事裁判の役割だ。真実を究明する場である法廷だが、型通りの公判だけでこの衝撃的な事件そのものを検証できるとは思えない。公判の内容を伝え、論点を詳細に報じて示すことが報道にかかわる者の責務であろう。

 重大な社会問題が放置され、被害救済がなされてこなかった背景にはメディアの無関心もあると私はみている。この裁判でどのような報道を行うのか、メディアの姿勢も問われている。

(了。前編から読む

【プロフィール】
鈴木エイト(すずき・えいと)/ジャーナリスト・作家。日本ペンクラブ理事、日本脱カルト協会理事、「やや日刊カルト新聞」主筆。統一教会問題を中心にカルト宗教問題について追い続けていた。著書に『自民党の統一教会汚染 追跡3000日』『自民党の統一教会汚染2 山上徹也からの伝言』(小学館)、『「山上徹也」とは何者だったのか』『NG記者だから見えるもの』(講談社+α新書)、『統一教会との格闘、22年』(角川新書)。

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