数年前から表舞台に姿を現わさないことが増えた習近平・国家主席(写真/AFLO)
日中関係が緊迫するなか、習近平・中国国家主席は虎視眈々と「台湾」に触手を伸ばそうとしている。そのカウントダウンのスピードが早まっているという。一体なぜなのか――キヤノングローバル戦略研究所上席研究員兼中国研究センター長の峯村健司氏が明かす。
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台湾有事に関する高市早苗・首相の国会答弁を機に、“日中対立の激化”が連日メディアを賑わせている。中国側はSNSや国営メディアを通じて日本非難の“宣伝”を強化し、中国の傅聡・国連大使は2度にわたり高市首相の発言撤回を求める書簡をグテーレス・国連事務総長に送付した。
日本政府は中国の主張の誤りを指摘しているが、中国に聞き入れられることはなく、高市発言について「戦後の国際秩序に挑戦するもので、国連憲章に深刻に違反する」などと繰り返している。
自国メディアによる宣伝だけでなく、国連を利用し訴える──これは中国が得意とする「三戦(法律戦、世論戦、心理戦)」というやり方だ。国際法や国際機関を利用する「法律戦」、世論を利用して国際的な支持を獲得する「世論戦」、あるいは日本側にプレッシャーを与える「心理戦」と見ることができる。なぜ今、これほど執拗に日本への攻撃を繰り返すのか。
その裏にあると考えられるのが、習近平・国家主席の“焦り”だ。
“民族の悲願”と銘打ち「台湾統一」を目指す習近平体制が異例の3期目に突入した2022年以降、台湾周辺では中国軍による大規模演習が何度も行なわれたほか、中国軍機や艦艇の活動が活発化し、緊迫度が高まっている。
そうしたなか、72歳を過ぎた習氏については、先日、南アフリカで開催されたG20サミットを理由を明かさず欠席したことで、健康不安を指摘する声が一部にある。
中国にとってトップの健康状態は機密中の機密であり確たる情報はないが、トップが公の場に姿を見せない事態は様々な憶測を呼ぶ。
習氏は数年前から表舞台に姿を現わさないことが増えており、何らかの治療をしていた可能性があるとみている。そのころの映像を見ると、直立していても首が少し横に傾く場面が多かった。
米CIA長官(当時)のビル・バーンズをはじめ、米国のインテリジェンス当局者や軍関係者の多くは習氏の3期目の任期が終わる「2027年まで」に中国軍が台湾侵攻の準備を整えると分析している。しかし、健康不安により習氏が「自分の目の黒いうちに必ず台湾を統一してみせる」という焦りを抱き、タイムスケジュールは早まったと見るべきだ。
