今年天国へと旅立った(イラスト/佐野文二郎)
放送作家、タレント、演芸評論家、そして立川流の「立川藤志楼」として高座にもあがる高田文夫氏が『週刊ポスト』で連載するエッセイ「笑刊ポスト」。今回は、2025年に他界したプロ野球選手たちについてお届けする。
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2025年もゲームセットである。海の向こうで大谷翔平の大爆発、海のこっちでは長嶋茂雄の人生サヨナラ本塁打。この年は野球ファンならずとも“グッバイ ミスター”の年として心に残り続けるだろう。
そこで年内最後の号としては同じプロ野球界のさよなら他界選手。
2月には「天覧試合」で長嶋とも闘った阪神の名ショート、吉田義男が亡くなった。「いま牛若丸」と呼ばれ、小さいながら本当に華麗なグラブさばきだった。のちに阪神監督、91歳。
同じタイガースで天覧試合では先発、針の穴をも通すと言われた絶妙のコントロール小山正明、90歳。イラストの佐野クン曰く「この日、小山は2安打ですから」。そして村山実にリリーフをあおぎ、長嶋からさよならホーマーを浴びている。長嶋も吉田、小山も同じ年に亡くなっているというのも不思議なめぐりあわせである。
そういえばヤクルトのつば九郎が天国へと旅立ったのも今年だった。越冬つばめとして来年神宮に帰ってくるという噂を小耳にはさんだ。
首位打者をとったこともある赤ヘル広島の水谷が8月に亡くなっている。山本浩二や衣笠祥雄らと黄金時代を築いた。たしか私と同い年77歳。
今回これを調べてて分かり大ショックだったのが、私が悪ガキの頃勿論巨人が大好きだったのだが国鉄のホームランバッター町田行彦に夢中だったのだ。すこぶる二枚目でホームランか三振かのどっちかだったような気がする。巨人のエンディ宮本と同じタイプ。バッターボックスに入るとでっかいのを打つんじゃないかとドキドキした。あの時の私は「巨人・大鵬・町田・玉子焼き」だった。
そのホームランの興奮はパ・リーグ西鉄の中西太と同質のもの。中西の飛距離たるやとんでもなく、福岡で中西が打ったボールが広島でみつかったという事実を私は知っている。ショートライナーと思って遊撃手がジャンプするとグングン伸びて外野へ、いや場外まで飛んでいったというエピソードすらある。セのホームランキングの町田は9月、91歳で寿命。
そして阪神ファンにはたまらない名前だろう。あれだけ大騒ぎして招いたマイク・グリーンウェル、わずか7試合で故障「野球をやめろという神のお告げだ」と謎の言葉を残してとっとと帰っちゃった。今でもナイツ塙や松村邦洋はこれをネタにして爆笑をとっている。グリーンウェルは10月、62歳で神の元へ。
※週刊ポスト2026年1月2・9日号
