「ON対決はやりたくない」の真意とは
2025年6月3日、長嶋茂雄さんが89歳で亡くなった。「週刊ポスト」でミスターは、20年以上にわたって続いた金田正一氏、王貞治氏との新春名物企画「名球会ONK座談会」で丁々発止のやり取りを繰り広げた。
2025年の最後に長嶋茂雄さんの思い出を振り返るべく、当時の“ONK座談会”の様子を再録する。【前後編の後編】
ON対決はやりたくない
長島監督率いる巨人と王監督率いるダイエーが日本シリーズで対戦したのは、2000年のこと。夢のON対決は、長嶋巨人が4勝2敗で制す。直接対決を終えた2001年掲載の座談会でも、ミスターは偽らざる心中を吐露していた――。
金田:戦ってみてどうだった。
長嶋:ボクはもう御免。ノーサンキューだね。ON対決は2度とやりたくありません。
金田:おいおい、そんなにワンちゃんのことが嫌いか。
長嶋:そうじゃなくて、正直いってやりづらかった。なぜかといえば、ワンちゃんはやっぱり戦友なんです。時代の流れとはいえ、V9時代を築いてきた仲間と勝敗をかけて対決する環境が、ボクはやりづらかった。正直、トーンダウンしました。
王:そりゃ、牙をむき出して闘うわけにはいきませんよ。
長嶋:あの監督が相手なら牙でも角でも出しますよ。でもそれはワンちゃんにはできなかったね(とキッパリ)。
金田:あの監督? おいおい同じセ・リーグで日本シリーズはできんぞ(笑い)。
──ONをヒマワリ、自らを月見草と称した“あの監督”を引き合いに出しながら思いを語ったミスターだが、翌シーズンで2位に終わると電撃辞任。2002年の座談会ではこんな会話がなされた。
金田:本当はいつ辞めようと思った?
長嶋:辞任しようと思ったのはオールスターの頃でしょうかね。もう人事なんて、みんなそこら辺りでしょう。違うかな、ワンちゃん。
王:ボクに振らないでよ、ミスター(笑い)。
金田:ということは、優勝しても辞めていたんだ。
長嶋:若い世代にバトンタッチするということは、ボクの世代に与えられた使命みたいなもの。それをいつやるかというだけで、たまたま今年だったということ。
