「司法記者クラブ」の問題点

 犯罪行為でない岡口氏の一連の表現が、名誉毀損でもないのに「非行」に並ぶものなのか────そんな疑問が残るなかで訴追された背景に、「空気を読まず、裁判所ムラの掟に背いたことがある」と当の岡口氏は見る。前述の通り訴追の対象となった13の表現行為には、白ブリーフの画像は含まれていないが、岡口氏は「裁判所当局が一番嫌がった核心は、白ブリーフだったのだと思います」と振り返る。

「もともと三権分立といっても司法の立場は弱いものでした。裁判所の権力の源は、国民の信頼を勝ち得ることしかない。そのために裁判官を“100%正義”の雲上人に仕立て、近寄りがたい存在であり続けるよう努めてきた裁判所にとって、白ブリーフの私はどうしても看過できないわけです。しかもおかしなことに、裁判所では誰ひとりその本音を口にしない」

 権力監視の役割を担うはずのメディアは本件についてほぼ沈黙することで裁判所をアシストした、と岡口氏は語る。むしろブリーフ姿の異様さを強調し、岡口氏の抗弁を「開き直った」などと断じた。岡口氏によれば事実認定の矛盾などの裁判の進め方の問題点について、審理があるたび記者会見を開いて弁護団が説明したが、記者から出てくる質問は「反省していますか」だったという。

「司法記者クラブの記者たちは、総じて20代の若手でした。裁判所当局側との懇親会があると、年上の裁判官が若手記者たちに教え諭すような格好になって、記者に当局寄りの意識が作られやすい構造があると思います」

 裁判官は法と良心にのみ基づいて判断するというのが「裁判官の独立」の原則だが、実際には裁判所当局の意向によって、現場の裁判官を処分することができ、それが弾劾裁判所による罷免を誘発した────すなわち「独立」が瓦解したという事実もほぼ問題視されなかった。

 本書が明るみに出した弾劾裁判のディテールは、メディアが一体となって裁判所ムラの権力行使を追認する、いびつな構造を浮かび上がらせている。

(第2回につづく)

■取材・文/広野真嗣(ノンフィクション作家)

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