なぜ大量に売り出されているのか(筆者提供)
前出・前川氏は出品者についてこう証言する。
「全国各地で展開されている骨董市へ足を運ぶと、中国人のバイヤーがたくさんいて、軍隊手帳などを大量に購入し、中国に持って行っているケースをよく見かけました。
15年ほど前には、中国各地の抗日記念館で物品を展示するため、わざわざ日本の骨董品屋などに当時の資料を買い付けにくる関係者もいて、私は販売しませんでしたが、自分の店にも来たことがありますよ」
だが、今は記念館などでの展示という用途を超えた需要が生まれているようだ。
ジャーナリストの周来友氏はこう指摘する。
「旧日本軍関連の物品取引が中国国内で増えている背景には、『愛国系動画配信者』の増加があると考えられます。高市首相の台湾有事発言以前から、中国は失業率の悪化や不動産市場のバブル崩壊などの問題に直面しており、政府は国民感情のガス抜きに対日歴史問題を利用しようとしてきた。
それに呼応して愛国系配信者が反日関連動画を配信し、大きな稼ぎを得ています。彼らは『入手した旧日本軍の物品を侵略の証拠としてこれから博物館に寄贈します』といった動画を配信しており、その制作のためにオークションで物品を入手していると考えられます」
旧日本軍をめぐる物品が「再生数を稼ぐ道具」になっているというのだ。
(後編につづく)
【プロフィール】
廣瀬大介(ひろせ・だいすけ)/1986年生まれ、東京都出身。フリーライター。明治大学を卒業後、中国の重慶大学に留学。メディア論を学び2012年帰国。フリーランスとして週刊誌やウェブメディアで中国の社会問題や在日中国人の実態などについて情報を発信している。
※週刊ポスト2026年2月6・13日号
