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【著者に訊け】島本理生氏 自身初の官能小説「Red」を語る

【著者に訊け】島本理生氏/『Red』/中央公論新社/1700円+税 

 小学生の頃から小説を書き始め、高校在学中の2001年、『シルエット』で華々しくデビュー。以来独特の透明感や瑞々しさを、島本理生氏(31)の作品は宿していた。

「装丁も青とか白の綺麗な感じで、性に関しても淡々と書く方が好きだったんですけど、妊娠をきっかけに好みが一変してしまって! 妊娠中も川上弘美さんの『真鶴』とか村上由佳さんの『ダブル・ファンタジー』とか、女の性の濃密な作品にハマってました(笑い)」

 最新長編小説、その名も『Red』は自身初の官能小説。妻や嫁、そして3歳の娘の母として一見恵まれた生活を送る主婦〈塔子〉が、元恋人との快楽に溺れ、堕ちてゆく軌跡を描く。〈三年間もセックスレスじゃなかったら〉と帯にあるが──果たしてそうなのか。無神経な夫や舅姑との同居、仕事への未練等、心と身体は常にすれ違い、その永遠に埋まらない空洞は、どんな女にも巣食う業にも思える。

「自分でも不思議なんです。以前は苦手だった生々しい身体感覚みたいなものが、出産後はリアルに迫ってきて、ピュアな自分にはもう絶対戻れないなって(笑い)。だったら全く違うものを書いてみようと思ったのが官能小説に挑戦した動機で、それまで主人公が殺してきた本能や欲望を書くうちに、だんだん今の女性の生き方とか普遍的な矛盾にテーマがシフトしていきました」

 塔子は会社員の〈真〉(しん)と友人の紹介で出会い、ごく普通に結婚。真は人間的に幼く、彼の実家での同居も当然に思う男だが、娘〈翠〉(みどり)の佳き父親ではある。幸い姑も気さくな人で、保育園に空きがなく働けないこと、そして真が女の性欲を嫌い、塔子も夫に口で奉仕するだけの生活に慣れてしまったことだけが、密かな悩みだ。

 そんなある日。高校以来の親友〈矢沢茉希〉と出かけた結婚式で、塔子は彼に再会してしまう。かつてバイトしていたベンチャー企業の社長で、不倫関係にあった〈鞍田〉である。

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