そして先日、雑誌『HERS』のインタビューで、中井美穂本人が、なぜ自分なのかということを分析していた。彼女はまず、局アナ出身者らしく、俳優・織田裕二の“世陸”への取り組み方を「カメラが回っているあいだ、言葉が途切れない(中略)驚くべき才能」「テンションが高くないとライブの実況はできません」「身体全体で現場の活気を表現されていますから(素晴らしい)」と絶賛している。
じゃあ自分はどうなのかというと、「日頃からテンションが低い」「ノリも良くないし、明るく元気に盛り上がろうっていうパワーが自分の中にまったくない」…だから織田裕二と「バランスがとれているのかもしれません」と分析するのである。
彼女が日芸で同級生だった放送作家の小山薫堂氏と私が、師匠が同じ“兄弟弟子”だったことから親しくさせてもらって、早四半世紀。同じ料理教室に通っていたこともあるし、いまは『エンジン01文化戦略会議』の会合で会うこともある。
野際陽子さんや氷川きよしくんが出演していた『旅の香り』(テレビ朝日系)では、私が作家、中井さんが出演…という“仕事”も経験した。
確かに本人の分析どおり、中井さんは自分から動いて派手なことをするタイプではない。『旅の香り』のときも、「局アナのクセが抜けなくて、どうしても聞き手にまわってしまう」と言っていたが、「中井さん、もっと話して!」「もっと自分を出して!」と感じたことが度々あった。
でも、そこが彼女の良さであり、たとえば、NHKの女子アナ出身ながら、女優として、インテリ女性として、確固たるポジションを築いていた野際陽子さんが「横に置いて邪魔にならない人」が中井さんだった。女優さんにとって、こういう人は本当に重宝だ。
本人も認める出不精で、食事会や旅行の段取りは全て女友達に任せっきり。『旅の香り』時代も、「彼女から情報が出て来るとはまったく期待できない」との声がリサーチから上がって来たものだが、それでも野際さん以下、問題視する人は皆無だった。
美人女子アナというタイプではないのも、エグゼクティブキャリアウーマンたちから引っ張りだこな理由だ。中井さんを可愛がっている某有名女性が、あるとき、別の女性についてこんな愚痴を言っていた。「ある大物男性を紹介したら、こっそり二人で海外旅行に出かけてしまった」というのだ。もちろん、その有名女性には内緒で…である。呆れた“後輩美人”が居るものだが、中井さんに限って、そういうことは絶対ないと断言できる。
とは言いながら、御主人は古田敦也氏。ここでもう彼女には“ブランド”があるのだ。それで喜んでいる人も彼女の周りには少なくない。
冷静な中井さんは、そういうことも全てお見通し。だからといって、「私を見て!」というタイプでもないのである。