国内

「法案成立で辞任」は嘘 菅直人追い込んだのは北朝鮮献金疑惑

「総理大臣が、北朝鮮とつながりのある団体に巨額の献金」国会で野党が厳しく追及し、各メディアが大きく報じたこの問題は、ジャーナリスト・田村建雄氏が本誌・SAPIOでいち早くスクープしたものだ。一気に「菅辞任」へと動いた舞台裏を田村氏が報告する。

 * * *
「自民党拉致問題対策特別委員会委員長の古屋圭司です」

 7月上旬、私への突然の電話だった。菅直人首相の献金疑惑追及プロジェクトチーム(PT)を発足させることになったという。そこで、私が『SAPIO』に掲載したレポート〈菅直人よ、「日の丸に唾する」政治団体に「年間5000万円」貢ぐつもりか!〉(6月15日号)の内容に関して解説してほしいという依頼だった。その時は日程が合わなかったものの、後日、古屋氏のほか複数の国会議員からの接触が続いた。

『SAPIO』の私の記事の主なポイントはこうだった。

●菅氏の資金管理団体「草志会」が、政治団体「市民の党」(東京・斎藤まさし代表、本名酒井剛)から派生したとされる「政権交代をめざす市民の会」(神奈川・奈良握代表)に多額の献金をしていた(2007年の5000万円を皮切りに3年間で6250万円)。

●「市民の党」には、過去に地方議会で日の丸を引きずり下ろす騒動を起こした人間や、よど号ハイジャック犯・元リーダーの田宮高麿の長男、つまり日本人拉致事件容疑者(田宮元リーダーの妻)の息子が所属している。

●さらに、「市民の党」の事務所が入るビルは元朝鮮総連関係者で“北朝鮮への送金王”と言われた人物が所有していた物件で、今もその親族が経営する企業がビル内に複数ある。この指摘に斎藤氏は「他フロアとはまったく接触はない」と偶然を強調した。

 この追及記事を皮切りに、産経、朝日、読売など各紙やテレビ朝日、フジテレビほかが問題を報じ、国会や報道で新事実が次々と明らかになった。「斎藤氏は10年ほど前に訪朝し、田宮元リーダーや家族と接触。その縁で長男とも知己を得た」「参院選のあった2007年、市民の党や派生団体の人件費が5500万円と突出。民主党陣営のボランティアと称し、裏で人件費が支払われていた疑惑がある」など。

 7月21日の参院予算委員会で菅氏は、参考人として出席していた拉致被害者家族に対し、ついにこの問題で謝罪。さらに古屋氏は数々の疑惑解明のため、斎藤氏の証人喚問を要求した。

「在日韓国人から104万円の違法献金を受けた問題では、返金時の領収書の日付をめぐり激しい応酬があった。領収書そのものの提出要求に首相は頑として応じない。外国人と知りつつ献金を受けた可能性もある」(自民党関係者)

 菅氏は当初、9月に国連で開かれる「原子力の安全性、核の安全保障に関するハイレベル会合」に出席し、同月の日米首脳会談にも意欲を滲ませていた。

「つまり8月初旬はサラサラ辞める気はなかった。それが突然10日の衆院財務金融委員会で『特例公債法案と再生可能エネルギー特別措置法案など退陣条件3法案成立にメドがついた』と辞任する意向を見せて周囲を驚かせた。この突然の心変わりの背景には、北朝鮮関連団体への献金疑惑と外国人献金問題でさらに追及される材料があったとする説が強い」(司法記者)

 追及PTメンバーの西田昌司参院議員はこう断言する。

「法案成立のメドが付いたから辞任というのは真っ赤な嘘。献金疑惑で火だるまになるのを恐れた辞任だ。拉致実行グループにつながる団体に、国民の税金が巨額献金されていたという前代未聞の醜聞であり、これは民主党全体の問題として考えなくてはならない。民主党は自浄能力もなく、幕引きを図ろうとするが、事は菅辞任でも終わらない」

 疑惑はまだ、晴れていない。

※SAPIO2011年9月14日号

関連記事

トピックス

10月22日、殺人未遂の疑いで東京都練馬区の国家公務員・大津陽一郎容疑者(43)が逮捕された(時事通信フォト/共同通信)
《赤坂ライブハウス刺傷》「2~3日帰らないときもあったみたいだけど…」家族思いの妻子もち自衛官がなぜ”待ち伏せ犯行”…、親族が語る容疑者の人物像とは
NEWSポストセブン
ミセス・若井(左、Xより)との“通い愛”を報じられたNiziUのNINA(右、Instagramより)
《ミセス若井と“通い愛”》「嫌なことや、聞きたくないことも入ってきた」NiziU・NINAが涙ながらに吐露した“苦悩”、前向きに披露した「きっかけになったギター演奏」
NEWSポストセブン
「ラオ・シルク・レジデンス」を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
「華やかさと品の良さが絶妙」愛子さま、淡いラベンダーのワンピにピンクのボレロでフェミニンなコーデ
NEWSポストセブン
クマ被害で亡くなった笹崎勝巳さん(左・撮影/山口比佐夫、右・AFP=時事)
《笹崎勝巳レフェリー追悼》プロレス仲間たちと家族で送った葬儀「奥さんやお子さんも気丈に対応されていました」、クマ襲撃の現場となった温泉施設は営業再開
NEWSポストセブン
役者でタレントの山口良一さん
《笑福亭笑瓶さんらいなくなりリポーターが2人に激減》30年以上続く長寿番組『噂の!東京マガジン』存続危機を乗り越えた“楽屋会議”「全員でBSに行きましょう」
NEWSポストセブン
11月16日にチャリティーイベントを開催した前田健太投手(Instagramより)
《いろんな裏切りもありました…》前田健太投手の妻・早穂夫人が明かした「交渉に同席」、氷室京介、B’z松本孝弘の妻との華麗なる交友関係
NEWSポストセブン
高市早苗氏が首相に就任してから1ヶ月が経過した(時事通信フォト)
高市早苗首相への“女性からの厳しい指摘”に「女性の敵は女性なのか」の議論勃発 日本社会に色濃く残る男尊女卑の風潮が“女性同士の攻撃”に拍車をかける現実
女性セブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《1日で1000人以上と関係を持った》金髪美女インフルエンサーが予告した過激ファンサービス… “唾液の入った大量の小瓶”を配るプランも【オーストラリアで抗議活動】
NEWSポストセブン
日本全国でこれまでにない勢いでクマの出没が増えている
《猟友会にも寄せられるクレーム》罠にかかった凶暴なクマの映像に「歯や爪が悪くなってかわいそう」と…クレームに悩む高齢ベテランハンターの“嘆き”とは
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
六代目山口組が住吉会最高幹部との盃を「突然中止」か…暴力団や警察関係者に緊張が走った竹内照明若頭の不可解な「2度の稲川会電撃訪問」
NEWSポストセブン
警視庁赤坂署に入る大津陽一郎容疑者(共同通信)
《赤坂・ライブハウス刺傷で現役自衛官逮捕》「妻子を隠して被害女性と“不倫”」「別れたがトラブルない」“チャリ20キロ爆走男” 大津陽一郎容疑者の呆れた供述とあまりに高い計画性
NEWSポストセブン
無銭飲食を繰り返したとして逮捕された台湾出身のインフルエンサーペイ・チャン(34)(Instagramより)
《支払いの代わりに性的サービスを提案》米・美しすぎる台湾出身の“食い逃げ犯”、高級店で無銭飲食を繰り返す 「美食家インフルエンサー」の“手口”【1か月で5回の逮捕】
NEWSポストセブン