国内

戦後 グランドビジョン持っていた総理は池田勇人と田中角栄

 高度経済成長時代最後の総理大臣だった田中角栄なら、デフレ不況に苦しみ続ける今の日本経済をどう立て直すだろうか。角栄の人物研究の第一人者として知られる政治評論家・小林吉弥氏が論じる。

 * * *
 東久邇宮稔彦王(ひがしくにのみやなるひこおう)から菅直人まで戦後32人の総理大臣が誕生している。そのなかで評価の高い人物は何人かいる。例えば、吉田茂。彼は軍事をアメリカに任せて日本は経済成長を目指すこととし、それは当時としては正しい選択だった。また、日米安保を改定した岸信介、沖縄返還を実現した佐藤栄作、行政改革に取り組んだ中曽根康弘といった具合に、それぞれ大きな仕事を成し遂げた総理大臣もいる。

 しかし、それらはいずれも“ワンテーマ”にすぎず、将来の日本はこうあるべきだという総合的で具体的な「グランドビジョン」を描き、その実現に向けて政策を行なったとは言い難い。まして、その他の多くの総理大臣は時々の情勢に応じて、対症療法的な政策を行なっていたにすぎない。菅直人も「最小不幸社会」なるものの実現を目指すとしてきたが、具体的内容は全く乏しく、単なるキャッチフレーズに終わっている。

 その意味で、戦後の総理大臣の中で明確なグランドビジョンを持っていたのは、所得倍増論を唱えた池田勇人と、日本列島改造論を掲げた田中角栄だけだろう。特に、総理大臣になる直前の1972年6月に発表した日本列島改造論は、まさにグランドビジョンと呼ぶに相応しいものだった。

 角栄は新潟という貧しい県の貧しい家に生まれ育ち、それゆえ高等小学校を卒業しただけで15歳で上京した。自らのそうした経歴ゆえか、平等意識、平等志向が強く、明治維新以降拡大の一途を辿っていた都市と農村、「表日本」と「裏日本」の格差を解消し、国土の均衡ある発展を目指すべきだという強い信念を抱いていた。それを総合的な政策提言として具体化したのが日本列島改造論である。

 よく知られているように、日本列島改造論は、都市に集中した工業を地方に再配置し、高速道路、新幹線、情報通信網などを全国的に整備することを謳っている。そして、それを実現するために、高速道路を1万km、新幹線を9000km整備する、本州と四国の間に3つの連絡橋を建設して近畿、中国、四国、九州地方を一体化した広域経済圏を作る、有線テレビ、テレビ電話、データ通信のネットワークを構築する……といった具体案を提示している。

 こうしたスケールの大きな、夢のある構想に国民は惹きつけられた。経済を発展させるためには、国民や企業のマインドを高揚させる必要があるが、角栄にはその力があった。いや、一般の国民だけではない。「自分たちにはない発想力を持っている」と、官僚も心服させられたのである。ここが他の総理大臣、政治家との大きな違いである。

※SAPIO2011年9月14日号

トピックス

イベントの“ドタキャン”が続いている米倉涼子
「押収されたブツを指さして撮影に応じ…」「ゲッソリと痩せて取り調べに通う日々」米倉涼子に“マトリがガサ入れ”報道、ドタキャン連発「空白の2か月」の真相
NEWSポストセブン
元従業員が、ガールズバーの”独特ルール”を明かした(左・飲食店紹介サイトより)
《大きい瞳で上目遣い…ガルバ写真入手》「『ブスでなにもできないくせに』と…」“美人ガルバ店員”田野和彩容疑者(21)の“陰湿イジメ”と”オラオラ営業
NEWSポストセブン
「ガールズメッセ2025」の式典に出席された秋篠宮家の次女・佳子さま(2025年10月19日、撮影/JMPA)
《“クッキリ”ドレスの次は…》佳子さま、ボディラインを強調しないワンピも切り替えでスタイルアップ&フェミニンな印象に
NEWSポストセブン
結婚へと大きく前進していることが明らかになった堂本光一
《堂本光一と結婚秒読み》女優・佐藤めぐみが芸能界「完全引退」は二宮和也のケースと酷似…ファンが察知していた“予兆”
NEWSポストセブン
売春防止法違反(管理売春)の疑いで逮捕された池袋のガールズバーに勤める田野和彩容疑者(21)
《GPS持たせ3か月で400人と売春強要》「店ナンバーワンのモテ店員だった」美人マネージャー・田野和彩容疑者と鬼畜店長・鈴木麻央耶容疑者の正体
NEWSポストセブン
日本サッカー協会の影山雅永元技術委員長が飛行機でわいせつな画像を見ていたとして現地で拘束された(共同通信)
「脚を広げた女性の画像など1621枚」機内で児童ポルノ閲覧で有罪判決…日本サッカー協会・影山雅永元技術委員長に現地で「日本人はやっぱロリコンか」の声
NEWSポストセブン
三笠宮家を継ぐことが決まった彬子さま(写真/共同通信社)
三笠宮家の新当主、彬子さまがエッセイで匂わせた母・信子さまとの“距離感” 公の場では顔も合わさず、言葉を交わす場面も目撃されていない母娘関係
週刊ポスト
タンザニアで女子学生が誘拐され焼死体となって見つかった事件が発生した(時事通信フォト)
「身代金目的で女子大生の拷問動画を父親に送りつけて殺害…」タンザニアで“金銭目的”“女性を狙った暴力事件”が頻発《アフリカ諸国の社会問題とは》
NEWSポストセブン
鮮やかなロイヤルブルーのワンピースで登場された佳子さま(写真/共同通信社)
佳子さま、国スポ閉会式での「クッキリ服」 皇室のドレスコードでは、どう位置づけられるのか? 皇室解説者は「ご自身がお考えになって選ばれたと思います」と分析
週刊ポスト
Aさんの左手に彫られたタトゥー。
《10歳女児の身体中に刺青が…》「14歳の女子中学生に彫られた」ある児童養護施設で起きた“子供同士のトラブル” 職員は気づかず2ヶ月放置か
NEWSポストセブン
知床半島でヒグマが大量出没(時事通信フォト)
《現地ルポ》知床半島でヒグマを駆除するレンジャーたちが見た「壮絶現場」 市街地各所に大量出没、1年に185頭を処分…「人間の世界がクマに制圧されかけている」
週刊ポスト
お騒がせインフルエンサーのボニー・ブルー(インスタグラムより)
「バスの車体が不自然に揺れ続ける」“タダで行為できます”金髪美女インフルエンサー(26)が乱倫バスツアーにかけた巨額の費用「価値は十分あった」
NEWSポストセブン