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小林よしのり 石破氏の“核攻撃受けたら核開発論”は間抜け

 本誌SAPIOの連載『ゴーマニズム宣言』で、昨年の秋より国防について論じてきた小林よしのり氏。150ページにおよぶ大幅な描き下ろしを加えて、ついに単行本『ゴーマニズム宣言SPECIAL 国防論』(小学館刊)が9月2日に発売となり、ベストセラーとなっている。

 描き下ろしである最終章「原発と国防」では、脱原発を進めると同時に、核兵器開発に乗り出すべきという、これまでにない衝撃的な提言をした。

 しかも、単に原発を廃炉にするだけではない。同様に国土を守るという意味から、核保有国の中国や北朝鮮に対する抑止力を持つために、核兵器開発に着手しなくてはならない、との論は保守、左翼を問わず、衝撃を与えて大論争を巻き起こしている。

 小林氏があらためて原発なき核武装を真正面から論ずる。

 * * *
 自民党の石破茂政調会長は、8月16日放送のテレビ朝日『報道ステーション』内のコーナー「原発 私はこう思う」に出演、「日本は核(兵器)を持つべきだと私は思っておりません」と断わった上で、しかし原発があるから作ろうと思えば1年以内に作ることができ、それが抑止力になるため、原発をなくすべきではないと主張した。

 わしは石破氏とは何度か対談もしたし、安定感のある政治家だと評価もしているのだが、どうも慎重に発言しているように見えて、はなはだしい自己欺瞞に陥っている。そのことに無自覚なようだ。

「核を持つべきではない」「だが作ることができるので抑止力になる」、そんな意志も覚悟もない単なる可能性としての技術力を恐れる国がどこにある? 強がっているだけでその気もないのが見え見えの国家など、なめられるのが当然ではないか。

 軍事マニアとして知られ、防衛大臣まで務めながら、石破氏は「核抑止力」というものを一切理解していなかったのか? しかしこれに似たような朧げな核保有「可能性」幻想で、原発を擁護しているみっともない自称保守の連中が未だに絶えないから、石破氏には申し訳ないが、わしの批判を受けてもらわねばならない。

 仮に「1年以内に核兵器を持てる」というのが事実だとしても、そんなものは何の「抑止力」にもならない。

 核攻撃を行なったら、ただちに核の報復を受ける。だから核兵器は持っていても使えない。これが「核抑止力」というものだ。

 核攻撃を食らってから、1年間かけて「核開発」を行なう? 何とも呑気な話だ。一度日本を核攻撃しておいて、それから1年近く何もせずに報復核攻撃が来るのを待つような、間抜けな国が世界のどこにあるというのだ?

 そもそも「1年以内」というのもかなり楽観的な予測で、山田克哉著『日本は原子爆弾をつくれるのか』(PHP新書)の試算では、「原爆1個に3年」である。しかも原爆1個できたところで、それだけでは何の意味もない。これをミサイルに載せ、敵地で爆発させるシステムまで開発しなければ兵器として役に立たないのであり、そこまで作るには5年かかるという。その間に、もう日本はなくなっているだろう。

※SAPIO2011年10月5日号

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