国際情報

中国によるチベットへの思想教育強まる 過去指導者肖像画配布

 北京五輪の際の聖火リレー等で話題となったチベット問題だが、問題は何も解決されず今も激しい衝突が続いている。今は果たしていどんな状況なのか? 中国事情に精通する国際教養大学教授のウィリー・ラム氏が解説する。

 * * *
「チベット情勢は最悪だ。チベット各地は人民解放軍により交通が寸断、チベット人居住区は包囲され、孤立しており外部から連絡がとれない。多数のチベット人僧侶が殺されたり、牢獄に送り込まれたりしている」

 こう語るのはインド亡命中のチベット仏教最高指導者、ダライ・ラマ14世の側近筋だ。

 同筋によると、チベット自治区を中心に四川、青海省などのチベット人居住区では昨年来、「宗教の自由」と「ダライ・ラマのチベット帰還」などの要求を掲げるチベット人による100件以上のデモや騒乱が発生。中国政府の政策に抗議して計20人もの僧侶や尼僧が焼身自殺を図った。

 だが、中国政府はチベット人の要求を完全に無視。抗議行動を封じ込めるため、軍や武装警察部隊を動員し警備を固める中、四川省内の数か所でデモ隊と軍・武警部隊が衝突し多数の死傷者が出ている。

 思想教育も強まっている。チベット自治区では毛沢東や鄧小平、江沢民、胡錦濤という歴代の4最高指導者の肖像画100万枚を各家庭に配布するキャンペーンを展開。これらの肖像画は次期最高指導者と目される習近平国家副主席が昨年7月、「チベット解放」60周年記念行事に参加した際、「チベットの各民族人民」に贈ったという。

 さらに、同自治区の全寺院に「9点セット」を備える「九有政策」が昨年末から始まった。肖像画のほか国旗、官制新聞(党機関紙「人民日報」と同自治区党機関紙「西蔵日報」)、さらに道路、水道、電気、テレビ、ラジオ、映画上映設備、図書室で、すべての経費は自治区がまかなうという。

※SAPIO2012年3月14日号

関連キーワード

トピックス

大谷翔平と真美子さん(時事通信フォト)
《自宅でしっぽりオフシーズン》大谷翔平と真美子さんが愛する“ケータリング寿司” 世界的シェフに見出す理想の夫婦像
NEWSポストセブン
裁判所に移されたボニー(時事通信フォト)
《裁判所で不敵な笑みを浮かべて…》性的コンテンツ撮影の疑いで拘束された英・金髪美女インフルエンサー(26)が“国外追放”寸前の状態に
NEWSポストセブン
山上徹也被告が法廷で語った“複雑な心境”とは
「迷惑になるので…」山上徹也被告が事件の直前「自民党と維新の議員」に期日前投票していた理由…語られた安倍元首相への“複雑な感情”【銃撃事件公判】
NEWSポストセブン
アメリカの人気女優ジェナ・オルテガ(23)(時事通信フォト)
「幼い頃の自分が汚された画像が…」「勝手に広告として使われた」 米・人気女優が被害に遭った“ディープフェイク騒動”《「AIやで、きもすぎ」あいみょんも被害に苦言》
NEWSポストセブン
お騒がせインフルエンサーのボニー・ブルー(時事通信フォト)
《潤滑ジェルや避妊具が押収されて…》バリ島で現地警察に拘束された英・金髪美女インフルエンサー(26) 撮影スタジオでは19歳の若者らも一緒だった
NEWSポストセブン
山上徹也被告が語った「安倍首相への思い」とは
「深く考えないようにしていた」山上徹也被告が「安倍元首相を支持」していた理由…法廷で語られた「政治スタンスと本音」【銃撃事件公判】
NEWSポストセブン
不同意性交と住居侵入の疑いでカンボジア国籍の土木作業員、パット・トラ容疑者(24)が逮捕された(写真はサンプルです)
《クローゼットに潜んで面識ない50代女性に…》不同意性交で逮捕されたカンボジア人の同僚が語る「7人で暮らしていたけど彼だけ彼女がいなかった」【東京・あきる野】
NEWSポストセブン
TikTokをはじめとしたSNSで生まれた「横揺れダンス」が流行中(TikTokより/右の写真はサンプルです)
「『外でやるな』と怒ったらマンションでドタバタ…」“横揺れダンス”ブームに小学校教員と保護者が本音《ピチピチパンツで飛び跳ねる》
NEWSポストセブン
遠藤敬・維新国対委員長に公金還流疑惑(時事通信フォト)
公設秘書給与ピンハネ疑惑の維新・遠藤敬首相補佐官に“新たな疑惑” 秘書の実家の飲食店で「政治資金会食」、高額な上納寄附の“ご褒美”か
週刊ポスト
山本由伸選手とモデルのNiki(Instagramより)
「球場では見かけなかった…」山本由伸と“熱愛説”のモデル・Niki、バースデーの席にうつりこんだ“別のスポーツ”の存在【インスタでは圧巻の美脚を披露】
NEWSポストセブン
モンゴル訪問時の写真をご覧になる天皇皇后両陛下(写真/宮内庁提供 ) 
【祝・62才】皇后・雅子さま、幸せあふれる誕生日 ご家族と愛犬が揃った記念写真ほか、気品に満ちたお姿で振り返るバースデー 
女性セブン
村上迦楼羅容疑者(27)のルーツは地元の不良グループだった(読者提供/本人SNS)
《型落ちレクサスと中古ブランドを自慢》トクリュウ指示役・村上迦楼羅(かるら)容疑者の悪事のルーツは「改造バイクに万引き、未成年飲酒…十数人の不良グループ」
NEWSポストセブン