ライフ

拾った猫を育てるのはリスキー 遺失物横領が成立した例も

 竹下正己弁護士の法律相談コーナー。今回は「勝手に公園の猫を持ち帰った場合、罪に問われてしまうのか」と以下のような質問が寄せられた。

【質問】
 近所の公園のベンチで休んでいるとき、ベンチの横に猫がいるのを見つけました。何歳ぐらいか分かりませんが、拾い上げてみると、とてもかわいいので、わが家に持って帰ることにしました。でも、このままわが家で飼っても大丈夫でしょうか。近所の交番に届ける必要はありますか。

【回答】
 他人が飼育している家畜は、その人が所有・占有する動産です。従って例えば家畜が逃げ出した場合、その家畜は所有者が占有を失った遺失物です。遺失物には原則として遺失物法の適用があり、拾得者が警察に届け出て、3か月後に所有者が分からなければ、拾得者が所有権を取得します。

 しかし犬や猫は例外で、動物愛護法第35条2項により、所有者不明の場合、都道府県などに対し、引き取りを認めることができます。役所は、公示して所有者の申し出を待ちますが、申し出がなく譲受人もいなければ、処分してしまいます。

 こうした手続きを取らずに迷い猫を持ち帰って飼い始めると、遺失物横領の罪になりかねません。もっとも猫の近くに飼い主がいなくても、そもそも逃げ出したといえるか疑問です。猫は柵に入れたり、つないだりしないのが普通です。自由気ままにさせていても、飼い主の家に出入りするもの。

 そこで、逃げ出したともいえない飼い猫を持ち帰れば、他人の占有する動産を奪ったことになり、窃盗になります。首輪があったり、毛並みが整えられたりして、飼育されていることがはっきりしている猫を持ち帰るのは危険です。

 いつも公園にいる薄汚れた野良猫であれば、飼い主がいない、あるいは飼い主が放棄した可能性があり、その場合は所有者がいない動産と考えることができます。すなわち無主物です。無主物は、先にその占有を押さえた人が所有権を取得します。つまり早い者勝ちです。ただ所有者がいないと、軽々に断定することは間違いです。

 前述のとおり所有権が分からない犬猫は、役所に引き取らせ、その手続きに則って、譲渡を受けるのがよいでしょう。過去に大きな川の生簀から逃げ出した緋鯉を捕まえ転売した事例で、遺失物横領の犯罪が成立した例もあります。

※週刊ポスト2012年8月10日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

悠仁さま(2025年11月日、写真/JMPA)
《初めての離島でのご公務》悠仁さま、デフリンピック観戦で紀子さまと伊豆大島へ 「大丈夫!勝つ!」とオリエンテーリングの選手を手話で応援 
女性セブン
高市早苗首相(時事通信フォト)
《日中外交で露呈》安倍元首相にあって高市首相になかったもの…親中派不在で盛り上がる自民党内「支持率はもっと上がる」
NEWSポストセブン
阿部なつき(C)Go Nagai/Dynamic Planning‐DMM
“令和の峰不二子”こと9頭身グラドル・阿部なつき「リアル・キューティーハニー」に挑戦の心境語る 「明るくて素直でポジティブなところと、お尻が小さめなところが似てるかも」
週刊ポスト
大谷翔平が次のWBC出場へ 真美子さんの帰国は実現するのか(左・時事通信フォト)
《大谷翔平選手交えたLINEグループでやりとりも》真美子さん、産後対面できていないラガーマン兄は九州に…日本帰国のタイミングは
NEWSポストセブン
高市早苗首相の「台湾有事」発言以降、日中関係の悪化が止まらない(時事通信フォト)
「現地の中国人たちは冷めて見ている人がほとんど」日中関係に緊張高まるも…日本人駐在員が明かしたリアルな反応
NEWSポストセブン
11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(現場写真/読者提供)
【“分厚い黒ジャケット男” の映像入手】「AED持ってきて!」2人死亡・足立暴走男が犯行直前に見せた“奇妙な”行動
NEWSポストセブン
10月22日、殺人未遂の疑いで東京都練馬区の国家公務員・大津陽一郎容疑者(43)が逮捕された(時事通信フォト/共同通信)
《赤坂ライブハウス刺傷》「2~3日帰らないときもあったみたいだけど…」家族思いの妻子もち自衛官がなぜ”待ち伏せ犯行”…、親族が語る容疑者の人物像とは
NEWSポストセブン
ミセス・若井(左、Xより)との“通い愛”を報じられたNiziUのNINA(右、Instagramより)
《ミセス若井と“通い愛”》「嫌なことや、聞きたくないことも入ってきた」NiziU・NINAが涙ながらに吐露した“苦悩”、前向きに披露した「きっかけになったギター演奏」
NEWSポストセブン
「ラオ・シルク・レジデンス」を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
「華やかさと品の良さが絶妙」愛子さま、淡いラベンダーのワンピにピンクのボレロでフェミニンなコーデ
NEWSポストセブン
クマ被害で亡くなった笹崎勝巳さん(左・撮影/山口比佐夫、右・AFP=時事)
《笹崎勝巳レフェリー追悼》プロレス仲間たちと家族で送った葬儀「奥さんやお子さんも気丈に対応されていました」、クマ襲撃の現場となった温泉施設は営業再開
NEWSポストセブン
11月16日にチャリティーイベントを開催した前田健太投手(Instagramより)
《いろんな裏切りもありました…》前田健太投手の妻・早穂夫人が明かした「交渉に同席」、氷室京介、B’z松本孝弘の妻との華麗なる交友関係
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《1日で1000人以上と関係を持った》金髪美女インフルエンサーが予告した過激ファンサービス… “唾液の入った大量の小瓶”を配るプランも【オーストラリアで抗議活動】
NEWSポストセブン