国内

民主党議員 流出維新塾名簿に「見せてくれ、どこでも行く」

 週刊ポスト前号で掲載した「橋下維新塾888人実名リスト」は大反響を呼んだ。氏名、年齢、経歴という“素性”が明らかになった今、誰もが抱く関心は「彼らが一体どの選挙区から出るのか」だ。

「民主党にも自民党にも投票したくない」と不満を募らせる有権者の受け皿となる維新候補をめぐる永田町の動きをレポートする。野田内閣不信任案の否決と消費税引き上げ法案の成立を経て国会がお盆休戦を迎えると、代議士たちはこぞってお国入りし、「近いうち」の解散総選挙に備えて汗を流している。

 しかし、彼らの「仮想敵」は、前回の総選挙で議席を争った大政党の対抗馬ではない。

 選挙分析に定評のある政治ジャーナリストの野上忠興氏が語る。

「次の総選挙の争点は民主と自民の政権選択ではなく、二大政党が足並みを揃える増税・原発再稼働路線の是非です。その『反増税、脱原発』勢力の中心が、橋下徹・大阪市長が率いる『維新の会』。橋下氏は全300小選挙区での擁立を宣言しており、民・自の候補は、維新候補に勝利することが議席獲得の絶対条件となる」

 そんな中で〈橋下政局〉が動き出した。

 消費増税法案成立の翌日(8月11日)、民主党の松野頼久氏、石関貴史氏、自民党の松浪健太氏とみんなの党所属の2議員の計5人の議員が大阪市内で橋下氏との会合を持った。松野氏は消費増税法案に反対票を投じ、石関氏は棄権した。松野、石関両氏は民主党を離党した小沢一郎氏が会長を務める政策グループ「新政研」のメンバーでもある。また松浪氏は不信任決議案採決で自民党の方針に逆らって賛成に回った「反逆組」だ。

 これは民自離脱組が維新に鞍替えする動きと見ることができよう。その後、松野氏らが作った研究会には、民自含めて10人以上の国会議員が所属し、維新の会との連携を前提とした新党結成準備に入ったことも明らかになった。

「総選挙前に現職国会議員5人を確保して政党要件(※)を満たす狙いがある。そうすれば小選挙区と比例の重複立候補が可能になるほか、政見放送や党代表(橋下氏)のポスターを貼れるようになる。松野氏らが維新の“初代国会議員”となるかどうかは定かではないが、彼らとしても維新の名前で選挙を戦えるメリットがある。いよいよ国政進出が本格化する」

 維新の会関係者は、「近いうちの戦」を前にして、興奮気味にそう語った。

 しかし、維新候補者の面々は杳として知れない。二大政党はそんな「見えざる敵」との選挙戦に不安一杯になっている。それだけに、本誌前号が報じた「橋下維新塾888人実名リスト」は永田町に大きな衝撃を与えた。

 維新の会が塾生名簿“流出”の事実を認め、橋下氏が「企業なら倒産しかねない問題。塾生には申し訳ない」と維新塾の会合で謝罪した直後から、与野党議員が本誌関係者に接触してきた。

「名簿を見せてくれ。どこにでも出向く」(民主党中堅)
「私の選挙区内の塾生だけでいい」(自民党若手)

 中には、「何か政権内の動きが起きた時には、『ポスト』に最初に教えるから」と“交換条件”を提示してきた政務三役の秘書もいた。維新政治塾の情報管理体制よりも、国家機密のほうが心配になってくる。

 すでに全塾生の実名と年齢、経歴は本誌前号で公開した。それでも彼らが血眼になって「名簿」を欲しがる理由は何か。前出の自民党若手はこう語る。

「名簿には塾生の住所がある。それがわかれば、敵が誰なのかを予測できる」

 別の議員は、「相手は素人。スキャンダルめいた話のひとつも出てくれば、出馬自体を潰せる。弱味を握るのは当然の戦術だ」とあけすけに白状した。だから、彼らは“自分の地元から誰が「維新」の襷(たすき)をかけて現われるか”を知りたがるのだ。

 自らの政策が正しいと信ずるならば、相手が誰であろうと、街頭演説でそれを堂々と訴えればいいはずだ。しかし、国民の大多数は消費増税にも原発再稼働にも批判的だ。国会では「多数派勢力」に胡座をかく彼らも、地元有権者の厳しい視線に気づかないほど鈍感ではない。「名簿を見せてくれ」という叫びには、そんな後ろめたさが同居している。

※政党要件/所属国会議員が5人以上もしくは、所属国会議員が1人以上、かつ、前回の衆議院議員総選挙、前回の参議院議員通常選挙、前々回の参議院議員通常選挙のいずれかの選挙における全国を通じた得票率が2%以上。政党要件を満たすことで、政党交付金を受けることが可能になる

※週刊ポスト2012年8月31日号

関連記事

トピックス

全国でクマによる被害が相次いでいる(AFLO/時事通信フォト)
「“穴持たず”を見つけたら、ためらわずに撃て」猟師の間で言われている「冬眠しない熊」との対峙方法《戦前の日本で発生した恐怖のヒグマ事件》
NEWSポストセブン
韓国のガールズグループ「AFTERSCHOOL」の元メンバーで女優のNANA(Instagramより)
《ほっそりボディに浮き出た「腹筋」に再注目》韓国アイドル・NANA、自宅に侵入した強盗犯の男を“返り討ち”に…男が病院に搬送  
NEWSポストセブン
ラオスに到着された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月17日、撮影/横田紋子)
《初の外国公式訪問》愛子さま、母・雅子さまの“定番”デザインでラオスに到着 ペールブルーのセットアップに白の縁取りでメリハリのある上品な装い
NEWSポストセブン
ドジャース入団時、真美子さんのために“結んだ特別な契約”
《スイートルームで愛娘と…》なぜ真美子さんは夫人会メンバーと一緒に観戦しないの? 大谷翔平がドジャース入団時に結んでいた“特別な契約”
NEWSポストセブン
山上徹也被告の公判に妹が出廷
「お兄ちゃんが守ってやる」山上徹也被告が“信頼する妹”に送っていたメールの内容…兄妹間で共有していた“家庭への怒り”【妹は今日出廷】
NEWSポストセブン
靖国神社の春と秋の例大祭、8月15日の終戦の日にはほぼ欠かさず参拝してきた高市早苗・首相(時事通信フォト)
高市早苗・首相「靖国神社電撃参拝プラン」が浮上、“Xデー”は安倍元首相が12年前の在任中に参拝した12月26日か 外交的にも政治日程上も制約が少なくなるタイミング
週刊ポスト
相撲協会の公式カレンダー
《大相撲「番付崩壊時代のカレンダー」はつらいよ》2025年は1月に引退の照ノ富士が4月まで連続登場の“困った事態”に 来年は大の里・豊昇龍の2横綱体制で安泰か 表紙や売り場の置き位置にも変化が
NEWSポストセブン
三重県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年11月8日、撮影/JMPA)
《季節感あふれるアレンジ術》雅子さまの“秋の装い”、トレンドと歴史が組み合わさったブラウンコーデがすごい理由「スカーフ1枚で見違えるスタイル」【専門家が解説】
NEWSポストセブン
俳優の仲代達矢さん
【追悼】仲代達矢さんが明かしていた“最大のライバル”の存在 「人の10倍努力」して演劇に人生を捧げた名優の肉声
週刊ポスト
10月16日午前、40代の女性歌手が何者かに襲われた。”黒づくめ”の格好をした犯人は現在も逃走を続けている
《ポスターに謎の“バツ印”》「『キャー』と悲鳴が…」「現場にドバッと血のあと」ライブハウス開店待ちの女性シンガーを “黒づくめの男”が襲撃 状況証拠が示唆する犯行の計画性
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(右の写真はサンプルです)
「熊に喰い尽くされ、骨がむき出しに」「大声をあげても襲ってくる」ベテラン猟師をも襲うクマの“驚くべき高知能”《昭和・平成“人食い熊”事件から学ぶクマ対策》
NEWSポストセブン
オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト