国際情報

日本が軍事費増やしても批判するのは中韓だけと櫻井よしこ氏

 ジャーナリストの櫻井よしこ氏は、「東南アジア諸国は、次の時代を左右する重要なプレーヤーです」と指摘する。そして彼らもまた日本同様、中国の脅威に晒されている。日本は彼らとどう手を携え、どのように繁栄の道を進むべきなのか。櫻井氏が提言する。

 * * *
 日本は戦後自ら外国に出て行って貢献することを憚ってきましたが、もっともっと積極的に前に出るのがよいと思います。例えば昨年12月に野田政権が緩和した武器輸出三原則はアジアの国々に本当に感謝されています。

 海賊対処のための巡視艇や、US-2型飛行艇、それに対潜水艦技術などは、緊張の海となった南シナ海周辺諸国、インド洋で中国の脅威を日々感じているインドなどにとって、切実に必要な技術であり、装備です。武器輸出三原則の緩和を徹底して行なうこと、さらに、その中にインドを対象国として含むことが大事です。

 インドをはじめベトナムなどのアジア諸国は原子力の平和利用に関する技術協力も切望しています。日本の優れた技術を伝え、安全な原子力利用の基盤作りを助けることが日本の国益にもなります。

 経済協力にせよ外交にせよ国家として継続して関わっていくシステムをわが国は構築し、人材を育てる努力を続けたいものです。外務省の担当者などは、2~3年で交代してしまう。短期間でクルクル代われば専門家は育ちません。長年同一人物に同じ分野で働いてもらい、それぞれの分野や地域におけるエキスパートになってもらうこと、加えて国際社会で日本の立場を広報し続ける努力が必要です。

 東南アジアの経済成長率はヨーロッパや米国、日本をはるかに抜いて、これからも成長し続けます。日本企業もその将来性を見て、生産拠点を中国から東南アジア諸国に移しつつあります。東南アジアの高い経済成長率に加えて、人件費は中国よりもかなり割安です。おまけに、前述したように、日本に大変な親しみを抱いています。そうしたことから、中国から東南アジアへのシフトはもっと加速されてもよいと思います。

 日本に友好的で信頼関係が結べる東南アジアの国々との経済関係を強化し、それらの国々に技術移転していくほうが、長期的に見て企業の利益にも、日本の国益にもかなうはずです。

 安全保障面でも東南アジア諸国との連携が重要です。例えば、合同軍事訓練やコーストガードの合同訓練をより積極的に行ない、情報共有を含めて交流を深めることです。そしてなによりも今、東南アジア諸国が求めていること、それは日本自身の軍事力の強化です。日本に、今や共通の脅威となった中国の軍事力に対処する柱のひとつになってほしいと彼らは考えています。

 日本が得手とする潜水艦は中国海軍に対して強い牽制となります。中国が原子力潜水艦、攻撃型原子力ミサイル搭載潜水艦を含めて71隻の潜水艦を保有しているのに対して、日本は16隻しかありません。急いで潜水艦の数を増やし、原子力潜水艦も持つべきです。それが南シナ海、西太平洋、インド洋の安全を守り、東南アジア及びインドなどの安全につながります。

 これまで24年間、激しい軍拡を続けてきた中国の軍事予算は、公表ベースで2012年度には1064億ドルに達しました。実際にはその2~3倍だと言われます。中国に対抗するために東南アジア諸国も軍事予算を増やしている中で、予算を減らしているのは日本だけです。この異常な軍縮予算の壁を打ち破り、軍事力の不足を早急に埋めることこそ、東南アジア諸国を安心させる道です。

 軍事費を増やしても、日本の「軍事大国化」を批判するのは中国と北朝鮮、韓国だけです。繰り返し強調しますが、東南アジア諸国は日本の軍事力強化、とりわけ海軍力の増強を期待しており、大歓迎することは間違いありません。海洋大国である日本と、海洋資源に恵まれたASEANの国々とのパートナーシップこそ、21世紀の国際社会を動かす大きな力となるでしょう。

※SAPIO2012年10月3・10日号

関連記事

トピックス

「父としての自覚」が芽生え始めた小室さん
「よろしかったらお名刺を…!」“1億円新居”ローン返済中の小室圭さん、晩餐会で精力的に振る舞った理由【眞子さんに見せるパパの背中】
NEWSポストセブン
関屋警部補を演じた原田大二郎(撮影/中庭愉生)
【放送50年特別インタビュー】原田大二郎が振り返る『Gメン\\\'75』の思い出、今だから話せる「関屋警部補が殉職した理由」 降板後も続いた丹波哲郎との良好な関係
週刊ポスト
多忙なスケジュールのブラジル公式訪問を終えられた佳子さま(時事通信フォト)
《体育会系の佳子さま》体調優れず予定取り止めも…ブラジル過酷日程を完遂した体力づくり「小中高とフィギュアスケート」「赤坂御用地でジョギング」
NEWSポストセブン
麻薬密売容疑でマグダレナ・サドロ被告(30)が逮捕された(「ラブ・アイランド」HPより)
ドバイ拠点・麻薬カルテルの美しすぎるブレイン“バービー”に有罪判決、総額103億円のコカイン密売事件「マトリックス作戦」の攻防《英国史上最大の麻薬事件》
NEWSポストセブン
東京都議選の開票を見守る自民党の木原誠二選対委員長(左)と井上信治・東京都連会長=22日夜、東京・永田町の同党本部(時事通信フォト)
《都議選で歴史的大敗》今や自民党は保守じゃない、参院選に向けてウリは2万円給付だけか 支持層から「時代について行けない集団」「消費期限切れ」「金払って党員になっても意味ない」の声
NEWSポストセブン
アナウンサーのオンカジ疑惑を早めに公表したフジテレビ(イメージ)
《オンカジの”儲からない”実態》逮捕されたフジテレビPは2400万円のマイナス、280億円賭けた「バカラのカリスマ」も数千万円のマイナス 勝てない前提のイカサマか
NEWSポストセブン
広島県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年6月、広島県。撮影/JMPA)
皇后雅子さま、広島ご訪問で見せたグレーのセットアップ 31年前の装いと共通する「祈りの品格」 
NEWSポストセブン
無期限の活動休止を発表した国分太一(50)。地元でもショックの声が──
《地元にも波紋》「デビュー前はそこの公園で不良仲間とよくだべってたよ」国分太一の知られざる “ヤンチャなTOKIO前夜” 同級生も落胆「アイツだけは不祥事起こさないと…」 【無期限活動停止を発表】
NEWSポストセブン
出廷した水原被告(右は妻とともに住んでいたニューポートビーチの自宅)
《水原一平がついに収監》最愛の妻・Aさんが姿を消した…「両親を亡くし、家族は一平さんだけ」刑務所行きの夫を待ち受ける「囚人同士の性的嫌がらせ」
NEWSポストセブン
TOKIOの国分太一(右/時事通信フォトより)
《あだ名はジャニーズの風紀委員》無期限活動休止・国分太一の“イジリ系素顔”「しっかりしている分、怒ると“ネチネチ系”で…」 “セクハラに該当”との情報も
NEWSポストセブン
夫・井上康生の不倫報道から2年(左・HPより)
《柔道・井上康生の黒帯バスローブ不倫報道から2年》妻・東原亜希の選択した沈黙の「返し技」、夫は国際柔道連盟の新理事に就任の大出世
NEWSポストセブン
新潟で農業を学ことを宣言したローラ
《現地徹底取材》本名「佐藤えり」公開のローラが始めたニッポンの農業への“本気度”「黒のショートパンツをはいて、すごくスタイルが良くて」目撃した女性が証言
NEWSポストセブン