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郵便物誤配への賠償 書留郵便はともかく普通郵便では厳しい

 竹下正己弁護士の法律相談コーナー。今回は「郵便物が誤配され、実務に支障が起きた。賠償を請求したい」と以下のような質問が寄せられた。

【質問】
 郵便局の配達人が配達先を間違えて、近所の家に配達してしまうという事故がありました。配達された側もすぐに郵便局へ連絡するなどの対応をしなかったため、郵便物の私宛への配達が遅れることに。そのため私は大事な会合に出席できなかったのですが、配達ミスによる損害賠償は請求できますか。

【回答】
 誤配による法的な責任追及は、日本郵便があなたに対し契約に基づく債務不履行責任か不法行為責任を負っているときに可能です。しかし受取人が日本郵便に対して、債務不履行を主張するのは困難です。郵便の利用契約は、差出人が郵便切手を貼って依頼し、日本郵便が配達を引き受けたものであり、受取人であるあなたは契約当事者ではないからです。

 また、郵便配達の依頼は、受取人に権利を発生させることを目的とするものではないと解されており、受取人が自分の権利を主張することはできません。結局、契約に基づく責任追及はできません。

 次に不法行為責任ですが、誤配によって、あなたの法的利益が侵害されたことが前提です。書留郵便では当時、国家公務員であった郵便局員の故意・重過失による場合まで免責にするのは、公務員の不法行為に基づく賠償を、国や地方公共団体に請求できるとした憲法第17条に違反するという最高裁判例があります。

 これは書留郵便には、特別料金を払うことで、適正かつ確実に配達されることへの期待があり、差出人や書留郵便の利用に関係する者の期待は、法的な保護に値すると考えられたためです。この点、普通郵便はそこまでの保護を受けるか疑問です。

 郵便法第50条第1項で、日本郵便が責任を負う範囲を、書留郵便の紛失など一定の郵便に限り、その第5項では、その一定の郵便以外については、一切賠償責任を負わない旨規定しています。これは郵便物が安い料金で広く公平に提供されることが公共の福祉に適うとの考えに基づきます。

 普通郵便でも職員の故意重過失による誤配等には、損害賠償責任を認めるべきとの見解もありますが、今件の場合、損失の立証も困難ですし、苦情を申し出て、業務改善を求めるのが有意義でしょう。

※週刊ポスト2012年11月16日号

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