芸能

「純と愛」朝ドラ壊す意気込みも「梅ちゃん先生」の二の舞か

 良質な作品には“創造的破壊”が付きものだ。ミタ現象を巻き起こした脚本家が描く朝ドラの場合はどうか。作家で五感生活研究所の山下柚実氏が考察した。

 * * *
 NHK連続テレビ小説「『純と愛』もスタートから3ケ月が経ち、いよいよ折り返し地点にさしかかるところ。視聴率は18%台と、相変わらずお茶の間の関心を引きつけ続けています。ネット上での評価は、賛否がまっぷたつ。作り手としては「ねらい通り」といったところでしょうか。

 スタート当初は、NHKの朝ドラらしくない風変わりな物語設定に、拒絶反応も聞かれました。「人の本性が見えてしまう」という愛に代表される奇妙な人物像に、「ついていけない」「オカルトチック」などの批判の声が。

 その不可思議な物語の枠組みも、現代の「純愛」を描くドラマの仕掛けとして、ずいぶんとお茶の間になじんできたようです。

 しかし最近は、奇妙な人物が出てくるわりにはドラマの展開が単調になっているのでは?と感じていている視聴者、実は多いのではないでしょうか。

 舞台は沖縄・宮古の実家ホテルへ。ホテルや土地の売買契約をめぐって書類に不備があるとかないとか、ホテルを手放すの手放さないの、両親が離婚するのしないの、入水自殺と見せかけて実は狂言だったの……。

 Aかと思うとB、Bになったかと思えばA。

 微妙な心の揺れや人間が生きることの陰影を感じさせるドラマ作りというよりも、同じ登場人物たちの中でぐるぐると、エピソードをひっくり返す連続。ドタバタ劇のパターン化に陥ってはいないでしょうか?

 沖縄という舞台についても、個性的な文化やゆったり流れる生活時間、土地にまつわる歴史や食、美しい海ゆえのリゾート開発をめぐる社会的諸問題……といったものがほとんど描かれないことも、ちょっと気になります。

 NHKの朝ドラといえば、ストーリーだけでなく、「ご当地」も主人公になるというのが定番でした。その土地「ならでは」の郷土色、文化や風土、方言や固有の暮らし方を取り込んで、お話を描いていくことが、ドラマの魅力を際立たせる「強烈な武器」になってきました。

 たとえば『カーネーション』。

 大阪・岸和田という街が実にいきいきと色濃く匂い立ち、街角の生活が細部まで浮かび上がってきました。岸和田を歩きたいと現地を訪れる観光客が激増したことが、その証しでしょう。

『純と愛』の脚本担当・遊川和彦氏は、「これまでの朝ドラの形を壊す」意気込みだそうですが、朝ドラの武器までを易々と手放すことはない。むしろ、それを強みとして存分に使いきってほしい。

 沖縄に限らず、純と愛が活躍するその土地で、風土の魅力、ふるさとの匂いや味わいをいきいきと立ち上がらせてほしい。土地性とストーリーとをからみあわせていく面白さを、残りの3ヶ月間でぜひ、見せてほしい。

 もしそれが無ければ、蒲田らしさがさっぱり伝わってこなかった無国籍朝ドラ「梅ちゃん先生」の二の舞になってしまう、と思うのです。

関連記事

トピックス

史上初の女性総理大臣に就任する高市早苗氏(撮影/JMPA)
高市総裁取材前「支持率下げてやる」発言騒動 報道現場からは「背筋がゾッとした」「ネット配信中だと周囲に配慮できなかったのか」日テレ対応への不満も
NEWSポストセブン
沖縄県那覇市の「未成年バー」で
《震える手に泳ぐ視線…未成年衝撃画像》ゾンビタバコ、大麻、コカインが蔓延する「未成年バー」の実態とは 少年は「あれはヤバい。吸ったら終わり」と証言
NEWSポストセブン
米ルイジアナ州で12歳の少年がワニに襲われ死亡した事件が起きた(Facebook /ワニの写真はサンプルです)
《米・12歳少年がワニに襲われ死亡》発見時に「ワニが少年を隠そうとしていた」…背景には4児ママによる“悪辣な虐待”「生後3か月に暴行して脳に損傷」「新生児からコカイン反応」
NEWSポストセブン
部下と“ラブホ密会”が報じられた前橋市の小川晶市長(左・時事通信フォト)
《黒縁メガネで笑顔を浮かべ…“ラブホ通い詰め動画”が存在》前橋市長の「釈明会見」に止まぬ困惑と批判の声、市関係者は「動画を見た人は彼女の説明に違和感を持っている」
NEWSポストセブン
バイプレーヤーとして存在感を増している俳優・黒田大輔さん
《⼥⼦レスラー役の⼥優さんを泣かせてしまった…》バイプレーヤー・黒田大輔に出演依頼が絶えない理由、明かした俳優人生で「一番悩んだ役」
NEWSポストセブン
国民スポーツ大会の総合閉会式に出席された佳子さま(10月8日撮影、共同通信社)
《“クッキリ服”に心配の声》佳子さまの“際立ちファッション”をモード誌スタイリストが解説「由緒あるブランドをフレッシュに着こなして」
NEWSポストセブン
“1日で100人と関係を持つ”動画で物議を醸したイギリス出身の女性インフルエンサー、リリー・フィリップス(インスタグラムより)
《“1日で100人と関係を持つ”で物議》イギリス・金髪ロングの美人インフルエンサー(24)を襲った危険なトラブル 父親は「育て方を間違えたんじゃ…」と後悔
NEWSポストセブン
「父と母はとても仲が良かったんです」と話す祐子さん。写真は元気な頃の両親
《母親がマルチ商法に3000万》娘が借金525万円を立て替えても解けなかった“洗脳”の恐ろしさ、母は「アンタはバカだ、早死にするよ」と言い放った
NEWSポストセブン
来日中国人のなかには「違法買春」に興じる動きも(イメージ)
《中国人観光客による“違法買春”の実態》民泊で派遣型サービスを受ける事例多数 中国人専用店在籍女性は「チップの気前が良い。これからも続けたい」
週刊ポスト
競泳コメンテーターとして活躍する岩崎恭子
《五輪の競泳中継から消えた元金メダリスト》岩崎恭子“金髪カツラ”不倫報道でNHKでの仕事が激減も見えてきた「復活の兆し」
NEWSポストセブン
自宅への家宅捜索が報じられた米倉(時事通信)
米倉涼子“ガサ入れ報道”の背景に「麻薬取締部の長く続く捜査」 社会部記者は「米倉さんはマトリからの調べに誠実に対応している」
米・フロリダ州で元看護師の女による血の繋がっていない息子に対する性的虐待事件が起きた(Facebookより)
「15歳の連れ子」を誘惑して性交した米国の元看護師の女の犯行 「ホラー映画を見ながら大麻成分を吸引して…」夫が帰宅時に見た最悪の光景とは《フルメイク&黒タートルで出廷》
NEWSポストセブン