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「八重の桜」綾瀬はるか主演で低調はなぜか 女性作家が考察

 朝ドラと大河の明暗がここまではっきりしてしまうのは前代未聞かもしれない。作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が考察した。

 * * *
 NHK大河「八重の桜」が、福島を舞台に鳴り物入りでスタートして半年。今、思わぬ数字の低調ぶりが話題になっています。前放送回(6月30日)の平均視聴率は14.0%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。制作陣は頭を抱え、後半にむかってテコ入れ中、との情報も。

「“オダジョーを告知映像に使うな”という命令が出ていたんです」「脚本が書き直されました。大幅にカットされたのが彼(オダギリジョー)の登場シーンでした。上層部の指示は男優メインのシーンを大幅に減らし、これからは、綾瀬はるかの出演シーンをもっと増やせというものでした」(「女性自身」2013.6.29)

 別にオダジョーのせいではないと思うんだけれど……。

 当初、ヒット間違いなし、と思われた「八重の桜」。たしかに主人公・八重を演じる綾瀬はるかは人気度抜群。今年の「タレント人気度ランキング」でも堂々の1位。ということはつまり、彼女自身の問題ではないということになる?

 では、いったいなぜ盛り上がらないの? 首をひねりたくなりますが、大きく3つほどの要因が考えうるのではないでしょうか?

●二足のわらじ

 ドラマの中では会津藩主・松平容保の葛藤や苦悩が浮き彫りになっています。松平容保を演じる綾野剛の力の入れ加減はすごい。「体に容保がしみ込んでいくようで、本当につらい。普通の精神状態ではできません。眉間には力が入るし、不思議な重力がかかってきます。現場に入ると病んでいる状態ですね」(週刊朝日 2013.6.21日号)と、本人も語っているほど。

 しかし、本来なら主人公・八重に焦点を絞り、人生の紆余曲折を細かく丁寧に描くことがドラマの根幹となるはず。サイドストーリーであるべき藩主がフォーカスされすぎたのでは。制作側が、「幕末」という時代と「会津」という場所にこだわり、「会津藩が置かれた時代状況」を伝えようと意識しすぎた。その結果、二足のわらじになってしまったかも。

●男優陣が充実しすぎ

 二足のわらじとも関係しますが、主人公以外の脇の男優陣が充実しすぎています。容保の綾野剛にはじまり、ムキムキの肉体が話題になった山本覚馬役・西島秀俊、八重の夫・川崎尚之助に「雲の階段」でブレイクの長谷川博己。神保修理役に爽やかな魅力の斎藤工、斎藤一役には大河初登場のドラゴンアッシュ・降谷建志。そして、西郷隆盛にぴたりはまった吉川晃司……。

 旬の人、華のある人、色気のある人、異色の抜擢。ついつい目を惹きつけられてしまう、オーラを放つ男優陣。今をときめく男優陣を揃えれば揃えるほど、主人公への集中度は薄まってしまいませんか?

●「戦う八重」が、お茶の間の女たちの共感を呼んでいない

「男勝りの主人公」「女だてらにスペンサー銃」など、制作側が「新鮮な魅力」と踏んだ要素が、お茶の間の女たちの共感を呼んでいないのでは? 一言でいえば、「戦う八重」に感情移入出来ないのです。

 勇ましく鉄砲隊の指揮官に志願し、軍服に身を包んで銃で敵を撃つ。そんな戦いのシーンを見せられ、どこかついていけない。このとまどいは何なの? 綾瀬はるかの凛とした横顔は、たしかに美しくカッコイイのに。「強い女」と、「銃を撃つ女」とはどこか違う、ということではないでしょうか? この計算違いが、盛り上がらない要因の一つかもしれません。

 会津藩が引き受けざるをえなかった矛盾や悲劇は、もちろん理解できます。でも総じて、「主君のため藩のため」に銃を撃つ八重、その兵士的な側面や戦う気持ちばかりが強調されて描かれすぎてはいないでしょうか?

 また、会津の女子どもや白虎隊が自ら死を選ばねばならない状況に追い込まれたのは、仕方のないことだったのかもしれません。だからといって、主君や藩のために自らの子や孫を殺める悲惨なシーンが、「それによって官軍がひるんだ」と肯定的な出来事としてしか描かれなかったことに、違和感を覚えたのは私だけでしょうか?

 日常の中で、ならぬことはならぬ、という哲学をしっかり持ちつつ、女として苦悩しながら強く生きる。そうした八重の魅力を細やかに描き出せば、女性視聴者の共感はきっと集まるはず。戦いや銃のシーンへのこだわりよりも。後半に期待したいと思います。

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