肥後もっこす(頑固な熊本人)的風貌の、設計技師だったという常連客(50代)は、3年前にこの店を見つけたという。
「自分は人付き合いが下手な男でしてね。酒だってひとりで黙って飲むだけでした。そういう意味で立ち飲みはちょうどよかったんですよ。それがここで隣りにいた客とごく自然に仲良くなりましてね。以来、見える世界が変わったし、自分という人間も1歩開けたと思う。ここを知らなかったら、どうなっていましたかね。心の底から立ち飲みって、すばらしいと思いますよ」
いつも朗らかで屋台家おでんのニックネームを持つ52歳のサラリーマンは、ちょっとしんみりとした口調で、こんな話をする。
「親父が宝焼酎の大ファンだったんですよねえ。そして自分はこの店で宝の焼酎ハイボールを初めて飲んだんですよ。さっぱりしていて甘くないところがとても飲みやすいでしょ。ウイスキーがベースじゃないから、当然、ウイスキーの味が押し寄せてこないのもいいんだよね。こんな出会いもなんかの縁なのかなあ。これを飲むたびに親父を思い出してます」