芸能

津川雅彦「テレビと左翼思想によって日本映画ダメになった」

 日本映画が質量ともに復調してきたと言われて数年経つ。1990年代には公開本数、興行収入ともに落ち込むばかりだったが、現在は毎年のように注目のヒット作が生まれ、シネコンが普及し映画館へ足を運ぶ人も増えた。ところが日本映画の父、マキノ省三の孫で俳優・映画監督の津川雅彦氏は「テレビ局がつくるのは最低の映画ばかり。映画賞もくだらん」と嘆く。作家の山藤章一郎氏が、津川氏の日本映画批判の言葉を報告する。

 * * *
 工藤栄一監督から、聞いたんです。「ぼくはマキノ光雄さんに育てられた」って。先に系譜をいうと、マキノ光雄は牧野省三の次男。長男がマキノ雅弘。ぼくは、四女・智子の子です。

 工藤さんは慶応法科を出て、東映の企画室に入った。のちに、集団抗争劇の傑作『十三人の刺客』や、やくざ映画を作った人です。で最初に、光雄から「毎日一冊本を読め。1年365本の企画書を出せ」と命じられた。工藤さんは3年間きっちりそれをやる。ほぼ1000冊ですね。「それがぼくの演出力とアイディアになっているんだ」と。映画を全盛に導いたのは、そのバイタリティです。そして基本。

 原作を読み漁る。テーマをどうするか。何で客を呼ぶか。キャラクターをどう立てるか。

 牧野省三は明治41年、日本初の劇映画『本能寺合戦』で、すでにその基本を打ち樹(た)てている。ヒーローとヒロインは同じ性格であってはいけない。相反、葛藤して初めてドラマになるといっています。それが〈ドラマチック〉だと。大映のオーナーだった永田雅一が「このごろのドラマにはチックがない」といったのは有名ですが、〈チック〉とは、匙加減で少し面白くする、派手にする、そういうサービス精神です。

 それがまあ、ひとつはテレビによって日本映画はだめになった。もうひとつは左翼思想。いっとき、左翼にあらずば映画人にあらずの風潮が吹き荒れた。左翼思想は別に悪くないが、反資本になる。

 私もマキノ雅彦を名乗って、いくつか監督をやった。叔父である雅弘にマキノを名乗るには条件がひとつあると言われました。

 自分でカネを出すな。自分でカネを出すと、客を喜ばそうとせずわがままになる。俺が損すりゃいいんだろうと自分の喜ぶ作品をつくる。それはダメだ。金主にカネを出させる。そして必ず儲けさせる。これがマキノの鉄則ですね。

 ところが左翼は、資本家を儲けさせたらだめだという。

関連キーワード

トピックス

全米野球記者協会ニューヨーク支部主催のアワードディナーに出席した大谷翔平と、妻・真美子さん(左/時事通信フォト、右/提供:soya0801_mlb)
《真美子さんが座る椅子の背もたれに腕を回し…》大谷翔平が信頼して妻を託す“日系通訳”の素性 “VIPルーム観戦にも同席”“距離が近い”
NEWSポストセブン
司法省がアンドリュー元王子の写真を公開した(写真/Getty Images)
《白シャツ女性に覆いかぶさるように…》エプスタイン・ファイルで新公開されたアンドリュー元王子とみられる人物の“近すぎる距離感の写真” 女性の体を触るカットも
NEWSポストセブン
(時事通信フォト)
【2・8総選挙「大阪1〜10区」の最新情勢】維新離党の前職が出た2区、維新前職vs自民元職vs野党候補の5区で「公明党票」はどう動くか
NEWSポストセブン
なぜ実の姉を自宅で監禁できたのか──
《“お前の足を切って渡すから足を出せ”50代姉を監禁・暴行》「インターホンを押しても出ない」「高級外車が2台」市川陽崇・奈美容疑者夫妻 “恐怖の二世帯住宅”への近隣証言
NEWSポストセブン
東京拘置所(時事通信フォト)
〈今年も一年、生きのびることができました〉前橋スナック銃乱射・小日向将人死刑囚が見せていた最後の姿「顔が腫れぼったく、精神も肉体もボロボロ」《死刑確定後16年で獄中死》
NEWSポストセブン
間違いだらけの議事録は「AIのせい」(写真提供/イメージマート)
《何でもAIに頼る人たち》会社員女性が告白「ケンカの後、彼から送られてきた”彼女の方が悪い”とAIが回答したスクショ」ほどなく破局
NEWSポストセブン
国際ジャーナリスト・落合信彦氏
国際ジャーナリスト・落合信彦氏が予見していた「アメリカが世界の警察官をやめる」「プーチン大統領暴走」の時代 世界の“悪夢”をここまで見通していた
NEWSポストセブン
高市早苗首相(時事通信フォト、2025年10月15日)
《頬がこけているようにも見える》高市早苗首相、働きぶりに心配の声「“休むのは甘え”のような感覚が拭えないのでは」【「働いて働いて」のルーツは元警察官の母親】 
NEWSポストセブン
ジェンダーレスモデルの井手上漠(23)
井手上漠(23)が港区・六本木のラウンジ店に出勤して「役作り」の現在…事務所が明かしたプロ意識と切り開く新境地
NEWSポストセブン
元日に結婚を発表した女優の長澤まさみ(時事通信フォト)
長澤まさみ「カナダ同伴」を決断させた「大親友女優」の存在…『SHOGUN』監督夫との新婚生活は“最高の環境”
NEWSポストセブン
国際ジャーナリスト・落合信彦氏
【訃報】国際ジャーナリスト・落合信彦氏が死去、84歳 独自の視点で国際政治・諜報の世界を活写 
NEWSポストセブン
薬物で急死した中国人インフルエンサー紅紅(左)と交際相手の林子晨容疑者(右)(インスタグラムより)
「口に靴下を詰め、カーテンで手を縛り付けて…」「意識不明の姿をハイ状態で撮影」中国人美女インフルエンサー(26)が薬物で急死、交際相手の男の“謎めいた行動”
NEWSポストセブン