芸能

「MOZU」の西島秀俊 背中に哀しみが滲み出ていると女性作家

 視聴者の反応がネットを通じてダイレクトに伝わってくることも影響してか、ドラマ制作の現場も変化しつつあるようだ。作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が今クールで注目する枠は「木曜午後9時」である。

 * * *
 いよいよスタートした春ドラマ。中でもダントツの注目作品は、警察ドラマ「MOZU~百舌の叫ぶ夜~」(TBS・WOWOW共同制作 木曜午後9時)でしょう。西島秀俊、香川照之、長谷川博己、真木よう子……とにかく、緊張感がいい。

 説明がなくても、筋なんかはっきりしなくても、ピリピリした空気と陰影ある画面に、ぐっと吸い寄せられてしまう。かたときも眼が離せない。役者の身体性も際立つ。真木よう子が思い切り殴ったり、西島秀俊が割れた筋肉を見せたり。役者から立ち上る匂いまでが漂ってきそう。

 細かい視線の動きが、次の展開を示唆する。説明的なナレーションやテロップはない。視聴者を集中させる仕組みが整っている。そして吉田鋼太郎、伊藤淳史、品川徹……これでもか、と存在感ある役者たちが、ズラリ脇に揃う。

 嬉しい悲鳴。なんという贅沢な時間。さらに、物語に説得力を加えているのがロケ。あちこちに実写の風景、見覚えのある街角が。丁寧に地道に、ロケを重ねていることがリアルを作り出す。香川照之がふと口にした言葉が、その秘密を物語っていました。

 「半沢直樹」の撮影中に、すでに「MOZU」の撮影が始まっていた--番宣で出た番組で、ぽろっと口にしたのです。

 えっ、半年以上も前から? ドラマ一つに、いかに時間をかけて作っているのかが伝わってくるエピソードです。

 時間が功を奏しているのは、役作りも同じ。西島秀俊の中には、愛していた妻を爆弾事件で失った公安警察官・倉木尚武という人物が、たしかに結晶している。黙ってタバコを吸う背中に、哀しみが滲み出ている。

 じっくりと腰を据えて一つのキャラクターを造形し、自分の中に役を育てあげる時間があったからでしょう。と、久しぶりにドラマ世界にどっぷり引き込まれる醍醐味。

  では、「MOZU」以外のドラマはどうなのか? 見回してみると……?

「かつてない復讐ドラマの扉が開く!! 日本のドラマでは見たこともない、痛快で破天荒なダーク・ヒロイン」と派手な宣伝文句が躍る「アリスの棘」(TBS系金曜午後10時)。

 復讐を誓う医師役・上野樹里は眼の強さが印象的。たしかに復讐に燃える人物の眼をしている。大河ドラマの「江」とは別人と思えるくらい、ガラリと雰囲気を変えている。役者としてあっぱれ。才能と可能性を感じます。

 それなのに。「アリスの棘」のストーリーの方はなんとも陳腐。見なくてもわかってしまう展開。安っぽい仕掛けや作り。上野樹里の役者力が空回りしないかと心配です。

関連記事

トピックス

日高氏が「未成年女性アイドルを深夜に自宅呼び出し」していたことがわかった
《本誌スクープで年内活動辞退》「未成年アイドルを深夜自宅呼び出し」SKY-HIは「猛省しております」と回答していた【各テレビ局も検証を求める声】
NEWSポストセブン
12月3日期間限定のスケートパークでオープニングセレモニーに登場した本田望結
《むっちりサンタ姿で登場》10キロ減量を報告した本田望結、ピッタリ衣装を着用した後にクリスマスディナーを“絶景レストラン”で堪能
NEWSポストセブン
訃報が報じられた、“ジャンボ尾崎”こと尾崎将司さん(時事通信フォト)
笹生優花、原英莉花らを育てたジャンボ尾崎さんが語っていた“成長の鉄則” 「最終目的が大きいほどいいわけでもない」
NEWSポストセブン
実業家の宮崎麗香
《セレブな5児の母・宮崎麗果が1.5億円脱税》「結婚記念日にフェラーリ納車」のインスタ投稿がこっそり削除…「ありのままを発信する責任がある」語っていた“SNSとの向き合い方”
NEWSポストセブン
出席予定だったイベントを次々とキャンセルしている米倉涼子(時事通信フォト)
《米倉涼子が“ガサ入れ”後の沈黙を破る》更新したファンクラブのインスタに“復帰”見込まれる「メッセージ」と「画像」
NEWSポストセブン
訃報が報じられた、“ジャンボ尾崎”こと尾崎将司さん
亡くなったジャンボ尾崎さんが生前語っていた“人生最後に見たい景色” 「オレのことはもういいんだよ…」
NEWSポストセブン
峰竜太(73)(時事通信フォト)
《3か月で長寿番組レギュラー2本が終了》「寂しい」峰竜太、5億円豪邸支えた“恐妻の局回り”「オンエア確認、スタッフの胃袋つかむ差し入れ…」と関係者明かす
NEWSポストセブン
2025年11月には初めての外国公式訪問でラオスに足を運ばれた(JMPA)
《2026年大予測》国内外から高まる「愛子天皇待望論」、女系天皇反対派の急先鋒だった高市首相も実現に向けて「含み」
女性セブン
夫によるサイバーストーキング行為に支配されていた生活を送っていたミカ・ミラーさん(遺族による追悼サイトより)
〈30歳の妻の何も着ていない写真をバラ撒き…〉46歳牧師が「妻へのストーキング行為」で立件 逃げ場のない監視生活の絶望、夫は起訴され裁判へ【米サウスカロライナ】
NEWSポストセブン
シーズンオフを家族で過ごしている大谷翔平(左・時事通信フォト)
《お揃いのグラサンコーデ》大谷翔平と真美子さんがハワイで“ペアルックファミリーデート”、目撃者がSNS投稿「コーヒーを買ってたら…」
NEWSポストセブン
愛子さまのドレスアップ姿が話題に(共同通信社)
《天皇家のクリスマスコーデ》愛子さまがバレエ鑑賞で“圧巻のドレスアップ姿”披露、赤色のリンクコーデに表れた「ご家族のあたたかな絆」
NEWSポストセブン
硫黄島守備隊指揮官の栗林忠道・陸軍大将(写真/AFLO)
《戦後80年特別企画》軍事・歴史のプロ16人が評価した旧日本軍「最高の軍人」ランキング 1位に選出されたのは硫黄島守備隊指揮官の栗林忠道・陸軍大将
週刊ポスト