あるいは、「リバースエッジ大川端探偵社」(テレビ東京 金曜深夜)の主演オダギリジョーにも、「ロング・グッドバイ」(NHK土曜午後9時)の浅野忠信にも、似たようなとまどいを感じてしまうのです。いずれの役者もいい味を持っていて雰囲気がある。けれど残念ながら、役者の魅力がじわっと画面全体に滲み出てこないのはなぜ?
もう一度考えてみたい。「MOZU」が、他のドラマと比べてここまで面白く感じられるのはなぜ?
「時」がヒントではないでしょうか? 時間の厚みが、ドラマを発酵させているからではないでしょうか?
西島秀俊は細マッチョ肉体が話題ですが、むしろ、あのげっそりと落ちた頬や無精髭に、「愛する妻を失った男」の緊張が宿っている。役作りにしっかり時間をかけてきたことが伝わってくる。時の厚みが、確実に、画面から匂いたち、視聴者に届いてくる。
才能がある俳優も、演じる役を自分の中で醸造させるのには時間がかかる。良いブドウも、ただ素材が良いだけでは美味しいワインにならないように。
お手軽に作ったドラマは深みも味わいもない。発酵するためには時間が必要。そんな紛れもない現実を見せてしまったのが、「MOZU」ショックであり、一つの教訓ではないでしょうか。