ライフ

高齢者の服薬は5種類までにしてそれ以上の薬はやめるべき

 高齢になると体にさまざまな疾患を抱えるようになり、病院で出される薬は増える一方だ。一度に10種類以上の薬を飲んでいる高齢者も珍しくない。

 しかし、これらの薬は本当に必要なのか。「飲む薬の種類が多すぎる“多剤併用”は高齢者にとってリスクが高い」と指摘する声が医学・薬学界から上がっている。

 高齢者の多剤併用に警鐘を鳴らすのは、『薬は5種類まで 中高年の賢い薬の飲み方』(PHP新書)の著者である、医師で東京大学大学院医学系研究科教授の秋下雅弘氏だ。

「そもそも人間は年をとればとるほど腎機能が低下して代謝・排泄が悪くなり、薬が長時間にわたって体内にとどまるので若い人に比べて薬が効きやすく、当然、副作用も出やすくなる。さらに数多くの種類を同時に飲めば、薬同士の相互作用(化学反応)が起こりやすくなり、体に思わぬ副作用が起きてしまうことがあります」

 薬の種類が増えれば体内で相互作用が起きやすくなるのは事実で、東大病院老年病科の入院患者2412名を対象にした調査では、多剤併用になればなるほど副作用が現われる率が高くなるという結果が出ている。

「1種類の薬で現われる副作用は5%前後ですが、服用する薬が6種類を超えると15%近くまで跳ね上がります」(秋下氏)

 にもかかわらず、なぜ高齢者に処方される薬は増えるのか。症状を緩和させるという目的があるにせよ、そこには「医学的、薬学的な根拠とは無関係な事情が絡んでいる」と秋下氏は指摘する。

「“とりあえず薬を出しておこう”という姿勢が医師側にある。また、患者側にも薬をほしがる人は多く、病院に行って薬をもらえないと損した気分になる人もいる。サプリメントも売れているが、こうした薬依存の風潮は危険です」

 高齢者にとっては危険の多い多剤併用。では、どうやって薬を減らしていけばいいのか。秋下氏が勧めるのは、飲む薬を5種類までに絞ることだ。

「高齢者が6種類以上の薬を服用するのは多すぎる。薬に優先順位をつけ、優先順位が6番目以下の薬は、いったんやめて様子を見てもいい。

 飲む薬の種類を減らしたことで健康になった人もいます。高血圧と狭心症、脳梗塞などに対する薬として7種類の薬を処方された男性がいましたが、血圧が下がりすぎてふらつきを起こしていた。そこで、飲む薬を7種類から4種類に減らしたところ、血圧は適正な数値となり、他の症状も軽くなってすっかり元気になりました」(秋下氏)

※週刊ポスト2014年5月2日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

元交際相手の白井秀征容疑者(本人SNS)のストーカーに悩まされていた岡崎彩咲陽さん(親族提供)
《川崎・ストーカー殺人》「悔しくて寝られない夜が何度も…」岡崎彩咲陽さんの兄弟が被告の厳罰求める“追悼ライブ”に500人が集結、兄は「俺の自慢の妹だな!愛してる」と涙
NEWSポストセブン
グラドルから本格派女優を目指す西本ヒカル
【ニコラス・ケイジと共演も】「目標は二階堂ふみ、沢尻エリカ」グラドルから本格派女優を目指す西本ヒカルの「すべてをさらけ出す覚悟」
週刊ポスト
阪神・藤川球児監督と、ヘッドコーチに就任した和田豊・元監督(時事通信フォト)
阪神・藤川球児監督 和田豊・元監督が「18歳年上のヘッドコーチ」就任の思惑と不安 几帳面さ、忠実さに評価の声も「何かあった時に責任を取る身代わりでは」の指摘も
NEWSポストセブン
大谷翔平と真美子さん(時事通信フォト)
《ハワイで白黒ペアルック》「大谷翔平さんですか?」に真美子さんは“余裕の対応”…ファンが投稿した「ファミリーの仲睦まじい姿」
NEWSポストセブン
赤穂市民病院が公式に「医療過誤」だと認めている手術は一件のみ(写真/イメージマート)
「階段に突き落とされた」「試験の邪魔をされた」 漫画『脳外科医 竹田くん』のモデルになった赤穂市民病院医療過誤騒動に関係した執刀医と上司の医師の間で繰り広げられた“泥沼告訴合戦”
NEWSポストセブン
被害を受けたジュフリー氏、エプスタイン元被告(時事通信フォト、司法省(DOJ)より)
《女性の体に「ロリータ」の書き込み…》10代少女ら被害に…アメリカ史上最も“闇深い”人身売買事件、新たな写真が公開「手首に何かを巻きつける」「不気味に笑う男」【エプスタイン事件】
NEWSポストセブン
2025年はMLBのワールドシリーズで優勝。WBCでも優勝して、真の“世界一”を目指す(写真/AFLO)
《WBCで大谷翔平の二刀流の可能性は?》元祖WBC戦士・宮本慎也氏が展望「球数を制限しつつマウンドに立ってくれる」、連覇の可能性は50%
女性セブン
「名球会ONK座談会」の印象的なやりとりを振り返る
〈2025年追悼・長嶋茂雄さん 〉「ONK(王・長嶋・金田)座談会」を再録 日本中を明るく照らした“ミスターの言葉”、監督就任中も本音を隠さなかった「野球への熱い想い」
週刊ポスト
12月3日期間限定のスケートパークでオープニングセレモニーに登場した本田望結
《むっちりサンタ姿で登場》10キロ減量を報告した本田望結、ピッタリ衣装を着用した後にクリスマスディナーを“絶景レストラン”で堪能
NEWSポストセブン
訃報が報じられた、“ジャンボ尾崎”こと尾崎将司さん(時事通信フォト)
笹生優花、原英莉花らを育てたジャンボ尾崎さんが語っていた“成長の鉄則” 「最終目的が大きいほどいいわけでもない」
NEWSポストセブン
日高氏が「未成年女性アイドルを深夜に自宅呼び出し」していたことがわかった
《本誌スクープで年内活動辞退》「未成年アイドルを深夜自宅呼び出し」SKY-HIは「猛省しております」と回答していた【各テレビ局も検証を求める声】
NEWSポストセブン
訃報が報じられた、“ジャンボ尾崎”こと尾崎将司さん
亡くなったジャンボ尾崎さんが生前語っていた“人生最後に見たい景色” 「オレのことはもういいんだよ…」
NEWSポストセブン