国際情報

叙勲受章台湾人男性の「日本という国を愛して」に日本人が感動

 4月29日、春の叙勲が発表され、4104人の日本人受章者とともに外国籍55人の受章が決定した。その中に「蔡焜燦(さい・こんさん)」の名前があったことに、日台両国で大きな歓声が沸き起こった。台北市にある蔡氏の自宅には多くの花や祝電が届き、お祝いを伝える関係者がひっきりなしに訪れている。

 旭日双光章に輝いた蔡焜燦氏は、「まだ伝達を受けていないので、喜びのコメントは正式に受章してからにしたい」と穏やかに語るが、自宅に殺到する祝電や贈花は、蔡氏の叙勲を我が事のように喜ぶ人が日台に数多くいることを物語る。

 自らを親日家ならぬ「愛日家」と称する蔡氏は、現在87歳。日本の短歌を愛好する「台湾歌壇」の代表として日本文化を広く紹介してきた功績が評価され、今回の叙勲となった。

 それ以上に蔡氏の「愛日家」を象徴するエピソードは、作家・司馬遼太郎との交流である。蔡氏が日本で知られるようになったきっかけは、司馬が手がけた『台湾紀行』(『街道をゆく』シリーズの第40巻)だった。同作品の取材のために台湾を訪れた司馬の案内役を務めたのが蔡氏であり、作中に蔡氏は「老台北(ラオタイペイ)」として登場する。

 司馬と「老台北」の、軽快で知的な掛け合いは多くの読者を魅了した。蔡氏の著書『台湾人と日本精神』(小学館文庫)では、台湾を訪れた司馬に、日本では珍しいヘチマ料理を振る舞った時のやりとりが記されている。

 司馬が「痰一斗(たんいっと)」と詠むと、蔡氏はすかさず「ヘチマの水も間に合わず」と返す。続いて司馬の「ヘチマ咲いて」には、「痰のつまりし仏かな」。そして「おとといの」には、「ヘチマの水も取らざりき」──。

 いずれもヘチマを題材にした正岡子規の俳句だが、司馬に同行していた新聞記者は、蔡氏の日本文化に対する造詣の深さに舌を巻いた。司馬はそんな「老台北」を見て、台湾の“日本語族”が、同じ歴史を共有する“日本人”であることを実感し、蔡氏を「博覧強記の人」「日本語の語感が確かな人」と評している。

関連キーワード

関連記事

トピックス

ビエンチャン中高一貫校を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月19日、撮影/横田紋子)
《生徒たちと笑顔で交流》愛子さま、エレガントなセパレート風のワンピでラオスの学校を訪問 レース生地と爽やかなライトブルーで親しみやすい印象に
NEWSポストセブン
鳥取の美少女として注目され、高校時代にグラビアデビューを果たした白濱美兎
【名づけ親は地元新聞社】「全鳥取県民の妹」と呼ばれるグラドル白濱美兎 あふれ出る地元愛と東京で気づいた「県民性の違い」
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
“関東球団は諦めた”去就が注目される前田健太投手が“心変わり”か…元女子アナ妻との「家族愛」と「活躍の機会」の狭間で
NEWSポストセブン
ラオスを公式訪問されている天皇皇后両陛下の長女・愛子さまラオス訪問(2025年11月18日、撮影/横田紋子)
《何もかもが美しく素晴らしい》愛子さま、ラオスでの晩餐会で魅せた着物姿に上がる絶賛の声 「菊」「橘」など縁起の良い柄で示された“親善”のお気持ち
NEWSポストセブン
『ルポ失踪 逃げた人間はどのような人生を送っているのか?』(星海社新書)を9月に上梓したルポライターの松本祐貴氏
『ルポ失踪』著者が明かす「失踪」に魅力を感じた理由 取材を通じて「人生をやり直そうとするエネルギーのすごさに驚かされた」と語る 辛い時は「逃げることも選択肢」と説く
NEWSポストセブン
大谷翔平(時事通信フォト)
オフ突入の大谷翔平、怒涛の分刻みCM撮影ラッシュ 持ち時間は1社4時間から2時間に短縮でもスポンサーを感激させる強いこだわり 年末年始は“極秘帰国計画”か 
女性セブン
10月に公然わいせつ罪で逮捕された草間リチャード敬太被告
《グループ脱退を発表》「Aぇ! group」草間リチャード敬太、逮捕直前に見せていた「マスク姿での奇行」 公然わいせつで略式起訴【マスク姿で周囲を徘徊】
NEWSポストセブン
11月16日にチャリティーイベントを開催した前田健太投手(Instagramより)
《巨人の魅力はなんですか?》争奪戦の前田健太にファンが直球質問、ザワつくイベント会場で明かしていた本音「給料面とか、食堂の食べ物がいいとか…」
NEWSポストセブン
65歳ストーカー女性からの被害状況を明かした中村敬斗(時事通信フォト)
《恐怖の粘着メッセージ》中村敬斗選手(25)へのつきまといで65歳の女が逮捕 容疑者がインスタ投稿していた「愛の言葉」 SNS時代の深刻なストーカー被害
NEWSポストセブン
俳優の水上恒司が年上女性と真剣交際していることがわかった
「はい!お付き合いしています」水上恒司(26)が“秒速回答、背景にあった恋愛哲学「ごまかすのは相手に失礼」
NEWSポストセブン
三田寛子と能條愛未は同じアイドル出身(右は時事通信)
《梨園に誕生する元アイドルの嫁姑》三田寛子と能條愛未の関係はうまくいくか? 乃木坂46時代の経験も強み、義母に素直に甘えられるかがカギに
NEWSポストセブン
大谷翔平選手、妻・真美子さんの“デコピンコーデ”が話題に(Xより)
《大谷選手の隣で“控えめ”スマイル》真美子さん、MVP受賞の場で披露の“デコピン色ワンピ”は入手困難品…ブランドが回答「ブティックにも一般のお客様から問い合わせを頂いています」
NEWSポストセブン