一方のダルビッシュの場合。4月28日に0-4で敗戦投手となったアスレチックス戦では、対戦投手が好投手だったこともあるが、味方はたった3安打に抑えられている。同16日のマリナーズ戦では序盤の2失点で凌ぎながら、降板後になって味方が逆転するなど、不運としかいいようのない試合が目立つのだ。
マー君が投げれば打線が奮起する。それは楽天時代、野村克也監督が「マー君、神の子、不思議な子」と評したように、ルーキー時代からしばしば見られた現象でもある。なぜ田中の投球が打線に火を付けるのか。
実は、援護率を左右する要因には「投手の特徴」が大きく関係してくるという。具体的には、「四球の少ないリズムのいい投球」ができる投手ほど、援護率が高くなる傾向にあるようだ。
近著に『無敗の男―田中将大』(大和書房刊)があり、自身も東京六大学野球で選手として活躍した、スポーツジャーナリスト・古内義明氏が語る。
「四球というのは投手自身を苦しめるだけではなく、実は後ろで守る野手にも悪影響を与えています。3人でビシッと抑えて、野手が小走りにベンチに戻れる時に比べて、四球を連発して投手が自滅し、ダラダラと守備の時間が長引くのでは、次の攻撃へのモチベーションが大きく変わってくる。一見、抽象的に感じるかもしれませんが、選手や野球経験者なら誰もが頷くはずです」
実はMLBに渡ってからのダルビッシュの大きな課題の一つが、この「四球の多さ」だった。
1試合あたりの四球数を示す「BB/9」という指標を見ると、デビューの2012年は4.19、翌2013年は3.43と、いずれもリーグ下位。今年は2.53と改善傾向にあるが、田中の数字と比べると見劣りする。
田中は1年目からすでに1.29で、リーグ上位にいるのだ。この四球の少なさは、彼のコントロールの良さに裏付けられている。
※週刊ポスト2014年5月30日号